政府が打ち出す女性活躍推進、叫ばれる働き方改革、幼児教育・保育の無償化、共働き世帯が6割を超え高まる長時間保育のニーズ。厚労省では、2018年に保育所等における保育の質の確保・向上に関する検討会が、2020年には保育の現場・職業の魅力向上検討会が設立されました。
「待機児童や保育士不足だけではなく、保育の質が取り上げられるようになってきた今、保育現場の質を高め、社会に発信することが社会的な評価を得ることにつながる」
そう語ったのは、保育博初日の主催者セミナーに登壇した玉川大学教育学部教授の大豆生田啓友先生。令和6年度末までにさらに10万人を超える保育所等の受け皿の整備が必要とされ、保育士も2万人程度必要と見込む厚労省の調査を元に、「今後、保育ニーズにおける地域格差は大きくなる。個人の園同士の競争原理ではなく、自治体の魅力も重要なカギになってくる」と語り、今後ますます人材不足が深刻な問題となる中で、保育現場の質や魅力向上だけでなく、自治体との連携や社会への発信の必要性を強調しました。
2日目に開催されたトークセッション「保育業界の時流予測&経営2020」では、㈱グローバルキッズ代表取締役社長の中正雄一氏と社会福祉法人あすみ福祉会茶々保育園グループ理事長の迫田健太郎氏が登壇。㈱船井総合研究所保育・教育支援部部長の大嶽広展氏の問いかけに対し、自園の取り組みを語りました。
全国で176もの保育園等を運営する㈱グローバルキッズの中正氏は、少子化の加速や女性就業率向上などの環境変化を受けて、「2030トリプルトラスト」というビジョンを設定。「選ばれる園になるために高品質な運営力やマーケティング力も重要。職員と親子、地域に最も信頼される存在になり、子どもたちの育ちと学びの社会インフラを目指す」と語ります。
茶々グループの迫田氏は、理念を明文化するMVV(mission・vision・value)を作成。「20年後を創る」というミッションを掲げる茶々グループが見据えるのは、社会。大豆生田先生が語った幼児教育における社会認識の転換です。
「外に目を向ければ少子化や地方創生、民主主義や科学技術、国際競争力、さらに世界に目を向ければSDGsのような課題がある。視座を高く深くもって、『未来/私たちはどうあるべき』という発想が大事」と想いを共有しました。
コロナ禍 貴重な商談の場に賑わい
保育博の特徴でもある展示会場では最新の保育施設用家具・什器類から防犯・見守りシステム、業務効率化・経営システムなど多岐にわたる製品・サービスが集まりました。
徹底したコロナ感染防止対策の中で来場した園関係者からは、「製品を実際に手に取ることができてよかった」「企業の想いを知れた」という声が寄せられ、出展者からも「コロナ禍だからこそ、来場された方は意欲的な方が多かった。製品への関心も高く貴重な機会だった」と満足の声が聞かれました。
2021年は7月6日・7日に西日本エリア初の保育博ウエスト、12月1日・2日に新会場にて拡大して保育博を開催予定(詳細はWebサイトにて)