「景色合わせ」からはじめる 業務改善とDX

 「働き方改革を推進するも残業が減らない」「ITに対する職員の意見が異なる」など一筋縄ではいかない業務改善。組織開発を専門とする沢渡あまねさんに業務改善で押さえたいプロセスを伺いました。

この記事のポイント

  • 組織開発の専門家が推奨!業務改善で押さえたいプロセス
  • 意外な盲点? 効果や変化を実感しやすいコミュニケーション業務をふりかえる
  • DX思考が新しい未来をつくる。業務改善が自然と起こる風土づくり



 「業務改善で一貫して大事なポイントは『みんなで同じ景色を見る』ことです」

 そう語るのは、ワークスタイルや組織開発の専門家で、400以上もの企業・自治体・官公庁で働き方改革や組織変革を伴走してきた沢渡あまねさん。そのプロセスには大きく4つのポイントがあるといいます。

 最初のステップは、「ありたい姿」を描き、職員全員で共有する(または一緒に描く)こと。大きな夢というよりも、「残業を減らして早く帰れるようにする」「ペーパーレスの園をつくる」など、イメージしやすい近い未来の姿を描きます。

 次に大事になるのは、「まず一つ小さな余白」をつくること。1日30分/週に1時間というように、ありたい姿を自分ごととして捉え、行動を起こすための余白をつくります。このときに特に着目したい業務として沢渡さんが挙げるのが、会議や書類作成などの間接業務、そしてコミュニケーション業務です。

 「保育活動などの特殊性を帯びやすい直接業務は完全に自園に合ったITサービスを見つけにくい。一方で、日々当たり前のように行っている間接業務やコミュニケーション業務はフローを標準化しやすく関わる人数も多いため、効果や変化を実感しやすい」

 沢渡さんはコミュニケーションを可視化するツールとしてチャットツールやグループウェアを推奨(Slackや LINE WORKSなど)。その場にいない関係者とも情報を共有できる場をつくることで、職員間の助け合いや情報の共有が起こりやすくなり、さらに、そうした「一人で悩まなくてよい状況」が業務のスピードや園の一体感につながるといいます。

 しかし、ここで注意しなくてはならないことは余白を目先の仕事で埋められてしまうということ。沢渡さんは業務改善の3つ目のポイントとして「余白を使ってやりたいことを決めること」を挙げ、園全体が理想像に向かう時間を確保することが重要と続けました。

 そして最後のポイントは、「現在時間と未来時間のバランスを取ること」です。今すぐ成果の見えやすい現在時間(目先の仕事)に対し、未来時間は成果が出るまでに時間がかかり、その成果も見えにくいもの。しかし、「余白で生んでもらいたいのは未来時間なんです」と沢渡さんは切に語ります。

 「未来時間とは未来の園や個の成長を生み出す時間。その積み重ねが未来の園を創る。今週の現在時間と未来時間の比率はどうだったか。理想は7:3。まずは1を目指したい」。未来時間に時間を使うことを園として承認することが改善の習慣化を生むと強調しました。

組織風土を行動習慣で醸成する

『コミュニケーションの問題地図』では情報共有に潜む問題と改善点を指南

 業務改善が自然と起こる風土づくりについて沢渡さんは、「トップが率先して改善に取り組むこと」「改善に一緒になって取り組み、改善がなぜ大事かをしつこく言い続けること」「改善に取り組む職員やチームを評価すること」が定着の要になるといいます。

 「組織風土は行動習慣によって醸成され、良くも悪くもなる。誰か一人ではなく、組織として進めていかなければ行動は習慣化しない。それにはDX体質になることが大切」と沢渡さん。IT活用に限らず、他園の取り組みを見学したり、業務改善者のコミュニティに参加したりなどの越境体験、園内外との対話を生みながら行動変容を起こす。そうしたDX思考が新しい未来を生むと期待を込めました。

ワークスタイル&組織開発専門家 沢渡 あまねさん

あまねキャリア株式会社CEO。「組織変革Labo」主宰。400以上の企業・自治体・官公庁で組織変革の伴走や講演を行う。著書は『職場の問題地図』『新時代を生き抜く越境思考』他。趣味はダム巡り。
https://www.amane-career.com/

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執筆者
服部由実

編集長。企画・取材を担当。IT企業の広報部門に所属し、社外広報や採用活動に取り組んでいます。

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