自粛解除後も動画活用 園の新たな可能性探る

登園自粛要請を機に動画配信に取り組み始めた後藤副園長
撮影・編集・投稿まですべてをスマホアプリで行っている
2020年4月、新型コロナウイルス感染拡大に伴う登園自粛要請を受け、動画配信に取り組む園が急増。この波は自粛要請解除後も変わることなく、育ちの可視化や保護者への連絡、保育の質向上に役立てられています。

 幼保連携型認定こども園こずわ幼稚園(静岡県沼津市)が登園自粛要請を受けたのは4月6日夕方、始業式を行った数時間後でした。

 離れた場所で過ごす園児のためにまず取り組んだのは、Youtubeを活用した動画配信。最初の動画は登園自粛から9日後に限定公開で投稿し、保護者にメールでお知らせしました。動画配信は初の試みです。

 「当時は3月に卒園した園児のことも気がかりだった。小学校の入学式が延期になり、園児でもなく小学生とも言いづらい無所属状態。最初に投稿した動画は在園児だけでなく卒園児にも配信した」

 そう語るのは、発案者の後藤副園長。動画は、卒園児が運動会で踊ったダンスを当時の担任が踊るという、想いの込もったものでした。
 その後は、運動会で踊るダンスやあやとり競争、絵描き歌など、動画を見ながら一緒に遊べるような内容を投稿。しかし、Youtubeでの動画配信には不安もあったそうです。

 「家庭での子どもの過ごし方について、Youtubeばかり見ることを懸念する保護者も多い。園が動画配信をすることで、結果的にYoutubeの視聴時間が増えたり、園が配信した動画とは異なる動画を見たりするのではないかと悩んだ」

 さらに、限定公開とはいえ、Youtubeは共有したURLが一人歩きする可能性も。

 そんなとき、同市の保育者仲間でもある原町幼稚園の鶴谷園長から紹介されたのが、動画配信アプリ「てのりの」です。
 同アプリは、スマホで撮影した動画を、動画1本につき最大1GB(約60分)まで投稿でき、アプリをインストールした保護者に園専用コードを共有することで公開範囲を限定して配信することができます。動画投稿と同時に保護者のスマホに自動通知されることもYoutubeとの大きな違いです。

 「ホームビデオ感覚で気軽に投稿できる。動画投稿にかかる時間も数分。動画を選んでコメントやハッシュタグをつけるだけ」

 6月4日、同園はその手軽さから「てのりの」を導入。園で1つのアカウントを登録し、自粛要請解除後の園の様子や無観客で開催した七夕運動会、プール開きなど、約2週間で10本以上の動画を投稿しています。

育ちをより鮮明に想像できる手段

 クラスごとのアカウントではなく、園で1つのアカウントを活用する理由について、「1学年1クラスの当園は、園内の行事をクラスを超えて全員で行う『1園1学級』を大事にしている。分け隔てなく、全クラスの様子が一覧で表示されることで、『年中になったらこんなことができるようになる』と育ちを楽しみに、親子で話題にしてもらえたらうれしい」と後藤先生。

取材当日は、園児に声をかけながら撮影したプール開きの動画を配信

 さらに同園は、8月に予定しているお泊まり保育の宿泊先の動画を撮影し、てのりのに投稿することを計画中。

 「例年は土曜日に休日出勤し、保護者説明会を行っていたものの、仕事で来られない方もいた。撮影した動画に昨年の様子がわかる写真を貼り付けてアフレコすれば、より保護者に伝わりやすい資料になる」と、保護者への連絡ツールとして新たな活用を見出しています。

 同園は時間帯や投稿頻度にルールを設けず、「続けること」を第一に掲げます。その心持ちが、園の柔軟な選択を後押しし、今までにない可能性を広げています。

執筆者
服部由実

編集長。企画・取材を担当。IT企業の広報部門に所属し、社外広報や採用活動に取り組んでいます。

注目の話題