「tap, tap, tap. t, t, t♪」と、テキストブックやタンバリンを片手に歌いかけるウィル先生。ウィル先生の発音や口の動きを真似て、子どもたちも後に続きます。ホザナ幼稚園では、「生きた英語にふれよう」と、2013年4月から英語教育カリキュラム「GrapeSEED」を導入。2019年4月には新たにリリースされた年少児対象の「LittleSEED」も導入し、3歳児クラスで実践し始めました。
「小さいときにほんまもんに出会うことが人生を豊かにするんや」と語るのは小西忠禮理事長。義母の経営する幼稚園に携わるようになったのは2002年、61歳のときでした。それまでは、フランス料理人として世界を目指し、28歳のとき、料理人であれば誰もが憧れるホテル「ル・リッツ・パリ」で日本人の料理人として初めて採用されるなど、活躍していました。そんな小西理事長が園経営という第2の人生を歩み始めたのは、38年間の料理人人生を支えてくれた義母に恩を返すため。未来を担う子どもたちのために自身のこれからの時間を捧げようと決めたそうです。
同園が考える「ほんまもん」。それがGrapeSEEDでした。きっかけは、当時26歳だった小西理事長がリッツで働くために単身フランスへ渡った際に、言葉の壁に苦労した経験。リスニングはもちろん、喉ぼとけを震わすような発音や男性と女性で異なる名詞に難儀したそうです。「『生きた語学』を身に付けるには、耳をつくることが大切。ヒアリングができなければ発音ができない。話せなければ、仕事にありつくことさえ叶わない」。小西理事長には、幼少期における英語教材の導入に並々ならぬ想いがありました。しかし、教材の導入には教師用・生徒用のDVDやテキストブックなど費用がかかります。導入時はもちろん、生徒が集まらなければ確実に赤字です。
「根底にあるのは『利他の心』。損得ではなく善意に生きる。10年後、20年後の子どもたちのために今、何ができるか。様々な種をまき、子どもたちにチャンスを与えるのが私たちの仕事」
小西理事長は、妻の小西洋子園長と話し合い、導入を決意。当初は、園児数も10人程度でようやく1クラスできるかという状況でしたが、今では約80名の園児が集まるまでになりました。
最高の経験が子どもを伸ばす
GrapeSEEDのレッスンは、「No Japanese. Talk in English」。すべて英語で話します。それは年少児を対象としたLittleSEEDも同じ。イラストやジェスチャーを交えて歌ったり、「Stand up」「Look up」など身体を動かしながら日常で使う言葉を表現したり、歌やテキストブックを通してrやthなど、よく使われる英語の音に親しんだり、様々なアプローチから聞く力を育てます。
「教材は山のようにあるが、アップデートに懸命に取り組むGrapeSEEDのスタッフの姿を見たとき、『もっと進化したものがきっと出てくる』と思った。LittleSEEDがまさにそう」と小西理事長。50年以上続く幼稚園のカリキュラムが発祥であることにも信頼を寄せていたそうです。
「最高の経験は子どもを伸ばす最大の要素。『これくらいでいい』という経験は逆にしない方がいい」という経験論を持つ小西理事長によると、その最高の環境の1つをつくり上げるのが、園の理念と合致するGrapeSEEDや熱意あるウィル先生のような存在。そうした環境が、未知の英語に対しても自分の知っている単語で懸命に伝えようとする子どもを育みます。
「子どもは大人の10倍、20倍の能力をもっている。それを最大限発揮できる場所をつくるのが園。幼少期ほど素直な心を持っている時代はないからこそ、力を尽くしたい」。英語教育に抵抗を感じる全ての保育者に小西理事長の言葉を贈ります。