園づくり、人づくりのためのIT経営実践フォーラム 園経営者が働き方改革で行うこと

ピョートル氏の講演。会場には、約130名の園関係者が来場

 12月2日、パステルIT新聞主催の「第7回園づくり、人づくりのためのIT経営実践フォーラム」を品川にて開催しました。今回のテーマは「しあわせな先生を育む採用活動と働く環境づくりのストーリーを考える」です。近年、人工知能(AI)の活用が進み、今後人間はそのAIとどのように向き合うべきかを問われる時代を迎えます。そんな時代に保育の現場ではどのように働き、お互いが関わり合い、成長していくべきか、その思考や実践方法について考える場を目指しました。

 第1講座「AI時代を乗り切る働き方とリーダーシップのありかた」には、元グーグル人材開発担当のピョートル・フェリークス・グジバチ氏が登壇。日本企業における働き方の特徴や、これからの時代で大切にすべき経営手法が示されました。「G7の中で、日本人は『働きがい』が一番低い。モチベーションを下げる労働環境も問題だ。ボトムアップの経営が必要」。さらにピョートル氏は、「『やらなきゃいけない仕事』をたくさん抱えている人が多いが、それは本当に子どもや保護者のため?」と、膨大になりがちな園業務の現状に問いかけました。

理想の園づくりについて語る野村園長

 第2講座では、(学)野村学園パール幼稚園の野村良司園長が、「頑張る先生たちのために園経営者が実践すべきこと」を語りました。「育ち愛」をコンセプトにした同園では、「共通の価値観と共通の優先順位」をすべての職員と持ち、育ち合うことで、「理想の園づくり」になることを紹介。「経営者は職員の未来を描く人であるべき。また、仕事は『能力』よりも『性格』で成果が出るもの。機会を与え、結果を出させることで人が育つように、丁寧にフォローし続けることが大事」と語る野村園長の言葉に、参加者は大きな気付きを得たようでした。

 第3講座には、ファンが集まる学園実現会代表の石田敦志氏が登場し、「先生を採用できる園づくり~環境・教育・実践で人を育てる~」をテーマに、毎年200万人が引退する一方で、新社会人になるのは50万人のみという時代がくる中で、園経営者は何をすべきかを提言しました。「幼稚園の無償化が実現すると、保護者は入園すること自体に価値を感じなくなるはず。価値の多様化が進み、目先のサービスを増やすことばかりに集中しないよう注意する必要がある」と語る石田氏。「人を育てるという役割に憧れを持ってもらえるような園づくりを」という石田氏の言葉に、参加者は大きくうなずいていました。

日本の未来予測について語る石田氏

 同フォーラムでは、3つの講座の他に、人材確保や働き方改革のヒントとなる2つのトピックスが紹介されました。(一社)全国認定こども園連絡協議会の木村義恭会長が、現在文部科学省の委託事業として取り組んでいる、採用・就職活動の実態調査の中間報告を発表。学生が就職先の園を選ぶ理由として、出身地以外にも学校がある場所に影響して就職先が変わることが明らかになりました。もう1つのトピックス「職員同士で絆と知識を深め合うしくみづくり」では、(株)サンロフトの日報システムの企画を担当している望月翔太が発表。職員間の情報共有手段に活用できるクラウド型情報共有システム「nanoty(ナノティ)」を紹介しました。

 同会場には、プリンターやIP無線機、英語教材など、教育・保育活動に役立つ様々な商品・サービスの展示も。ピョートル氏が講演の中で述べた「破壊的なイノベーションは他業界の人によるものが多い」という言葉の通り、多くの参加者が働き方にイノベーションを起こすヒントを掴もうと意見を交わしていました。

執筆者
八木侑子

2・4面担当のパステルIT新聞編集スタッフ。ライティングだけでなくデザインも担当しています。

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