保育園と保護者をつなぐ情報共有サービス「 kidsly(キッズリー)」 成長を共有し、子育てを楽しめる社会に

森脇 潤一 氏 岡山県生まれ。博報堂DYグループを経て、(株)リクルートマーケティングパートナーズ入社。保育園と保護者をつなぐコミュニケーションサービス「kidsly(キッズリー)」を企画・開発。まなび事業本部 事業開発部 保育支援推進リーダー

 2014年6月。夫は妻の育児日記を見つけ、衝撃を受けます。そこには自分の知らない、子どもの成長と母親の深い愛が綴られていました。なぜ、もっと早く気付けなかったのか。妻が早逝し、後悔に苛まれた友人を目の当たりにした森脇さんは、これが日本のどこの家庭にも起こり得る現実だと感じました。

 かけがえのない子どもの、何気ない日々の成長ぶりを夫婦でしっかり共有できる仕組みをつくりたい。7月から構想を練り始め、翌年1月、社内の新規事業コンテストでグランプリを受賞。本格的に事業開発が始動しました。こうして誕生したのが、保育園と保護者をつなぐ、コミュニケーションサービス「kidsly(キッズリー)」です。

 多くの園には、子どもの生活に密着した記録を保護者とやりとりするための連絡帳が存在しています。森脇さんは、全国約300の園にヒアリングし、保育士のボランティアも経験するなどして、保育現場における保護者との情報共有について徹底的に学びました。そして、連絡帳をデジタル化することによって広がる可能性を見出しました。ITが苦手な先生や保護者にも受け入れてもらえるように、インターフェースのデザインは森脇さんが指揮を執り、使いやすさを追求。収集する情報も機能もシンプルにしました。わずか半年で導入園は300以上。森脇さんのビジョンもサービスも社会的に高く評価され、kidslyはグッドデザイン賞やキッズデザイン賞などの栄誉に輝きました。

保育園と保護者をつなぐ情報共有サービス「 kidsly(キッズリー)」 成長を共有し、子育てを楽しめる社会に
グッドデザイン賞特別賞「未来づくり」授賞式

先生や母親を幸せにするには

 「kidslyは、特に父親の態度を変容させた」と森脇さんは語ります。子どもの様子がわかれば、子どもや奥さんとの会話も増え、父親も子どもの日常に寄り添える状況ができました。子どもの話を夫とすることで、子育てに奮闘する母親の心理的負担は軽減されました。離れて暮らす祖父母にも好評。子どもを育む家族の絆が深まっていきます。

 また、保育者が園での子どもの生活ぶりをオープンにすればするほど、保護者は子どものことがわかるだけでなく、保育者の細やかな配慮や温かな見守りの目線を知り、感謝と信頼の気持ちを抱きます。「子育ての当事者である母親や先生が幸せになれるよう、自信や誇りを持って子育てを楽しめるコミュニケーションの仕組みを考えた」と森脇さん。課題の本質を見極めた仕組みだからこそ、使うほどに体験価値が得られるようです。

kidsly(キッズリー)
執筆者
鈴木あゆみ

パステルIT新聞編集長。特集の企画・ライティングほか、紙面全体の編集を担当しています。

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