企業の強み活かす園経営「このはな保育園」
余剰人員を抱え ゆとりある保育実践

ゆとりある人員体制で保育者の心的負担も軽減
 2020年3月、㈱オフィス桐生は子育てのしやすい環境をつくろうと企業主導型保育園「このはな保育園」を開園。地方には少ない、小規模・低年齢児に特化した園経営とそのこだわりを取材しました。

 このはな保育園のある三重県鈴鹿市は待機児童が0人である一方で、エリアによっては子どもの数に対して園が少なく、近隣の園に預けるのが困難という課題を抱えていました。しかし地方の場合、財政難の中で園をつくることは至難の業。そうした中、「地元での子育てが少しでもしやすい環境をつくりたい」と開園したのが、企業主導型保育園「このはな保育園」でした。

 経営者で施設長を務める桐生常朗さんは、「自治体予算を必要とせずに園をつくれる企業主導型保育園は地方にこそ需要がある。企業の強みを活かし、園の既成概念から抜け出すような実践をしたいと思った」と開園当初を振り返ります。

 特徴は、少人数保育と低年齢児に特化した保育。園児19名に対して規定より多い人員(保育者5~6名、看護師1名)を配置し、子どもがやりたいことをくみ取ることを大切にしています。
 「出発点として丁寧に保育ができる環境をつくりたいと思っていた。発達のスピードが早い低年齢児は特に。地方は小規模認可園が少ないので独自性は出せていると思う」
 保育活動では必ず2つ以上の活動を用意し、子どもの主体性を伸ばしながら保育ができるよう工夫しているそう。

 さらに、余剰人員を多く抱える体制は休憩や休みをとりやすく、職員の働きやすさにもつながっています。その他、保育システムを導入し、連絡帳や日誌、週日案をデジタル化。月間指導計画や年間計画はGoogleドライブで共有し、園児の写真はGoogleフォトで保護者と共有しています。加えて、「鈴鹿市旭が丘 保育園」で検索した時に同園のサイトが1ページ目に表示されるようにGoogle広告も活用しています。

 開園から1年。こうした取り組みに注目が集まり、他園のコンサルも行うようになった桐生施設長。企業では当たり前に行うようなSEO対策やネット広告のノウハウを提供したり、面接や園見学に立ち合ったりする中で、園児数が急増した園もあったそうです。
 「認可園と異なり、企業主導型は情報共有の場が少ない。同じ悩みをもった経営者が情報共有することで保育事業全体に貢献できることがあるのではないか」
 コンサル希望も随時受付中です。

 取材園の声 このはな保育園(三重県鈴鹿市)


 土や植物、石、木などの自然を肌で感じられる園舎は第40回三重県建築賞「濱口賞」、第15回キッズデザイン賞「子どもたちを産み育てやすい部門」を受賞。

執筆者
服部由実

編集長。企画・取材を担当。IT企業の広報部門に所属し、社外広報や採用活動に取り組んでいます。

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