コロナ前後の心理分析 中堅層の成長光る

人間関係心理学に基づいたパーソナリティ傾向を診断する「せんせいエゴグラム診断」を提供するNICCOT Partners(神奈川県横浜市)が、コロナ感染拡大前後での保育者の心理状態を調査。年代別の変化が見られました。

新型コロナウイルス感染拡大に伴う、最初の緊急事態宣言の発令から1年。園の人材課題に対し、IT技術やデータ分析を活用した診断、コンサルティングなどを行う(一社)NICCOT Partnersは、同法人が園向けに提供する「せんせいエゴグラム診断」の診断傾向をBeforeコロナ・Withコロナとで比較しました。

エゴグラムとは、人間心理学理論に基づいたパーソナリティ傾向分析手法。アメリカの精神分析学者 エリックバーンが開発したもの。親から受け継いだものや育った環境、年齢や経験など、さまざまな要素から、「今の自分の状態」を把握することができます。

同診断は、これに園という職場ならではの「対人ストレス傾向」を追加した保育士・幼稚園教諭専用のオリジナル診断です。厳格度、受容度、状況対応度、自由度、協調度、対人ストレス度のバランスから、今の自分の行動特性を22タイプに分類。特に、年末から新年度にかけて、職員の心理状態の把握や人員配置の最適化のために役立てられています。

今回比較したのは、2019年1月~12月に同診断を利用したBeforeコロナ(840名)と2020年1月~2021年1月に利用したWithコロナ(717名)の実施者(約8割が前年度も実施)。エゴグラムの5つの要素のうち最も優位に表れた要素を集計しました(上図を参照)。

特に変化が表れたのは、30代・40代でした。柔軟に状況を受け入れる「受容度」、行動力や発想力につながる「自由度」がアップ。

「オンライン保育やオンライン園見学、オンライン保護者会。急激なオンライン対応が迫られる中、エッセンシャルワーカーとして、『状況を受け入れて、できることをやろう』とがんばってらっしゃる姿が浮かんでくる」

中堅・ベテラン層の変化について、代表の桑子和佳絵さんはそう嬉しそうに語ってくれました。

一方で、経営者層の多い50代・60代は、伝統や習慣を尊重する「厳格度」が下がり、「協調度」がアップ。コロナという想定外の事態、慣れないオンライン化への対応に、周囲の意見を聞きながら慎重に判断するようになったことがわかります。

相互理解で行動を変える契機に

代表の桑子和佳絵さん

調査前の2020年秋、桑子さんの元には、「コロナの影響で雇用の安定化が難しくなった」という声が届くようになっていたそうです。しかし、調査後、「決してネガティブなことばかりではない」と思えるようになったそう。

「30代・40代の健闘・成長によって、園児対応や保護者対応、職員育成の可能性が広がった。だからこそ、50代・60代も一方的ではないリーダーシップを発揮できるチャンス。年代や経験、知見、それぞれの強みを活かすことで、園の土台もより強くなっていく」

もともと桑子さんが同診断を始めたのは、風通しの良い職場には自己理解・相互理解が欠かせないという考えから。

「例えば、スピード感のある自由人先生とじっくり考えるお人よし先生。自由人先生には『待つ』トレーニングが必要で、お人よし先生には『勇気を持って伝える』トレーニングが必要。自己理解と相互理解を深めることで、得意を活かし合ったり、応援し合ったりすることができる。結果として職員の心理も安定し、それが子ども・保護者に良い影響を与える」

新年度のスタートに、今の自分・職員の状態を捉え直してみませんか?

一般社団法人NICCOT Partners

保育園、幼稚園の人材課題に対し、IT技術やデータ分析を活用した診断、コンサルティング、研修によるサポートを行う。

執筆者
服部由実

編集長。企画・取材を担当。IT企業の広報部門に所属し、社外広報や採用活動に取り組んでいます。

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