5年、10年後の子どもへ 園・保護者・企業が届ける 母目線の卒園アルバム

広田正晴園長(中央)とアルバム委員の東野さん(右)、加藤さん(左)
尾山台ナザレン幼稚園は、「子どもや保護者と共につくり上げる園」を目指し、卒園アルバムを保護者と共同で制作。制作会社の夢ふぉとを加え、3人4脚でアルバムづくりに取り組んでいます。

 子どもたちのイラストを集めたアルバムの表紙をめくると、子どもの直筆サインやクラス・行事ごとの写真が表情豊かに並びます。

 「みんなでつくる、みんなの幼稚園」をスローガンに掲げる尾山台ナザレン幼稚園は、20年ほど前から卒園アルバムを保護者と共同制作。年長クラスからアルバム委員を募り、毎年4~5名の保護者が制作に携わっています。

 「当初はページを自在に増やせるフエルアルバムで、母親目線で選んだ写真を1枚1枚焼き増しして、手づくりしていた」と話す広田正晴園長。しかし、サイズも大きく手間もかかるため、3年前に製本アルバムへの移行を決意。「本棚の一部として、手軽に取り出せるようなものでありたかった」と想いを教えてくれました。

 アルバム委員の東野友佳さんは、譲れないポイントの1つに、「絵表紙の仕上がりを本物の絵に近づけること」を挙げています。

 ただ、製本印刷では熱処理の際にクレヨンの濃色は滲んでしまうという欠点があり、制作会社探しも難航。

 その時、同園が出会ったのが株式会社夢ふぉと(大阪府)でした。夢ふぉとの絵表紙は専用の台紙に絵を描き、それをラミネートして表紙にするため、絵の質感を保つことが可能です。

 「本当はクレヨンの使用はNGだった。でも、色味が変わるスキャンは避けたいという私たちの希望に対し、油分の少ないクレヨンを使用するなど、別の提案や努力を必ず返してくれる」。

 今では制作だけでなく、次年度のアルバム委員の引き継ぎまで夢ふぉとがサポートしています。

子どもと園の成長を残す1冊

カラフルな絵が並ぶ絵表紙

 構成決定後は、写真選定からレイアウトをアルバム委員が行います。制作ソフトはインターネット上で操作でき、自宅にいながら園や他委員と協力して取り組めます。

 アルバム制作の肝である写真選びは、「普段お母さんたちが見られないような表情を選ぶ」と言う加藤亜希子さん。何万枚もの写真から選定する中で、おとなしい子が海苔で歯を黒くして笑っている写真など、意外な表情に多く出会うそうです。「5年、10年後、『楽しかったね』と温かな気持ちになれるようなものにしたい」とアルバムに込める想いを教えてくれました。

 こうした保護者との共同制作について広田園長は、「母親目線によって選ばれる写真は園では思いつかないような表情で、毎年特徴が出る。この積み重ねが、園がどう成長していくかという歴史をつくっていく」と期待を膨らませます。

尾山台ナザレン幼稚園
執筆者
服部由実

編集長。企画・取材を担当。IT企業の広報部門に所属し、社外広報や採用活動に取り組んでいます。

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