保育×防災で考える 命守る備えと行動とは

 小さな命を預かる保育現場。自然災害が頻発する昨今、災害時の保育者一人ひとりの判断や事前の備えが重要性を増す中、9月1~7日、「保育防災カンファレンス」がオンラインで開催されました。

 「防災訓練を見直したいが、日々の業務が忙しい」「本当に今の防災訓練の方法で園児を守れるか不安」
 こうした保育者の声に応えるべく、㈱ニシハタシステムは、保育×防災カンファレンスを企画しました。

 「ニシハタシステムでは、主に地震や安否確認に役立つ情報発信をしてきたが、防災というテーマは幅広く、様々な観点がある。今回、具体的な事例やノウハウを各分野の専門家から発信する機会をつくることで、先生方のお役に立ちたいと開催を決めた」と同社専務取締役の西畑進太郎氏。

様々な分野の専門家が「防災」をテーマに語る

 カンファレンスは、㈱アイギスの脇貴志氏による「保育施設における災害対策の問題点」でスタート。いわゆる「災害弱者」である子どもたちが多く集まる保育現場で、防災・減災対策をどう進めるか? 論点や課題が整理されました。

 続く2日目では、東日本大震災の語り部として、(一社)Smart Supply Visionの佐藤敏郎氏が登壇。当時の様子を振り返りながら、「逃げるかどうか? どこへ逃げるか? 緊急時、時間と情報が足りない中、判断が遅れるほどパニックになる。平時から行動を決めておくべき」と語り、誰もが当事者意識を持ち、実際の想定と行動を決めておく大切さを強調しました。

 また、(一社)Bird’s-eyeの菅原淳一氏による「防災人が出逢い、繋がりこどもたちの命を守る地域づくり」では、地域に詳しい郵便局長防災士らとタッグを組んだ避難訓練や、地域住民・行政・子どもが参加する「防災会議」など、防災人の発掘・活用や地域の協力関係づくりにつながっている事例を紹介しました。

 後半の2日間では、より実践的なアクションやツールが紹介されました。自然体験教育プログラムを提供する、しずおか環境教育研究会の山本由加氏は、保育の大事な要素の一つ、自然体験で危機予知力やセルフエイド(自分は自分で守る)の力を育む方法を伝授したほか、あいおいニッセイ同和損害保険の堀江健氏は、職員全員がとるべき防災行動を時系列で整理した「タイムライン」作成のポイントを解説。日常で使うものやサービスを非常時にも役立てるフェーズフリーの考え方も広がっています。

日常から高める防災意識

㈱ニシハタシステムの西畑専務

 開催を終えて、「防災への取り組みは、日常で意識することが少ない。だからこそ、こういったイベントをきっかけに、自園のあり方を見直したり、もしもの時を具体的に想定したりすることに活用してほしい」と西畑専務。

 また、「これまで『保育×防災』という観点で各領域の専門家の知見や経験を一挙に学べる場はあまりなかった。初めての取り組みだったが、園の皆さんのお役に立てるように、来年以降も継続的な開催、リアルイベントなども検討していきたい」と語りました。

 同カンファレンスの各講演の記録動画は、2022年9月30日(金)までの期間限定で視聴可能。視聴には、公式サイトでの視聴申し込みが必要です。

㈱ニシハタシステム(大阪府)

 「当たり前の防災を体現する」を理念に、園の災害対策や情報共有ツールとして、IP無線機や緊急地震速報機を提供し、園の災害対策を支援している。IP無線機は全国1,300園以上の園で活用されている。

防災カンファレンス2022のアーカイブ配信は2022年9月30日(金)まで

執筆者
芦川桃香

取材・執筆を担当。地方IT企業の広報目線で、地元企業の採用活動やオンライン配信などを支援。

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