子どもの「今」を見える化 観察支援と声がけをサポート

現在の親子関係を動物親子に例えて表示。縦軸は親の子育てタイプで、横軸は親子間の愛着の方向性を示している
2020年3月、発達心理学をベースとした情報発信を通じて、子育て家庭の支援に取り組む一般社団法人日本こども成育協会は、子どもの「今」と親子関係の傾向を把握するWebアプリ「オヤトコ診断」をリリースしました。

 オヤトコ診断は、2~5歳児の子どもを持つ保護者が、子どもの今の興味や親子関係の傾向を客観視するためのWebアプリです。特徴は、子どもの認知発達の専門家 沢井佳子先生が長年蓄積されたノウハウや知見(こども発達スケールⓇ)をベースにしていること。診断結果は、発達心理学と人間関係心理学の観点から、16タイプの動物親子に分類。例えば、親の子育てタイプがスマート(周囲の目を気にして行動)で、愛着の方向性が互いにさっぱりとしている親子は「バランス重視のひつじさん親子」というように親子関係の特徴から、声がけ・かかわりのアドバイスを知ることができます。

 「一番の目的は、子どもの発達段階を見える化すること。理論だけではなく、保護者も発達段階を把握し活用できるものをつくりたいと思った」

 そう語るのは、アプリの構想から携わっている一般社団法人日本こども成育協会 理事の大塚千夏子さん。本来、子どもの発達は保護者にとって楽しみなものですが、多くの保護者は「○歳になったら○○ができるうようになる」という情報をもっているため、逆にその情報に捉われて悩んでしまうのも事実。大塚さんはこれまで子育て支援に取り組む中でその葛藤を感じていました。

 しかし大切なのは、「何歳だからこれができる」ではなく、「わかること」や「できること」には獲得していく段階があることを理解すること。その順序を知り、「10歳までにこのくらいのことができるようになる」という見通しを持って、子どもの次のステップを楽しみに待つ。それが発達心理学を取り入れている理由です。

 同アプリは、親子の関係性を把握する上で、人間関係心理学に基づいたママエゴグラム診断Ⓡ(一般社団法人NICCOT)と連携。子どもの関わり傾向のアドバイスを行っている同法人 代表の桑子和佳絵さんは、子どもが4歳の頃、甘いものをご飯よりも先に食べてしまうことに悩んでいたそうです。その時、同アプリを監修している沢井先生の「甘いものを食べてしまうのは本能に基づいている証拠ですよ」という一言に救われたそう。

 「役に立ったというレベルではなく、楽になる。人間の本能として当然のことだったんだと安心する。ゼリーが2つあったとしたら、『1つは食べていいよ』と、大手を振って言える。この安心感が子育てをするお母さんたちに必要だと確信した」と教えてくれました。

子どもの興味関心を家庭と育て合う

幼児期に必要な発達の4領域

 オヤトコ診断では親子関係の特徴の他、子どもの今の興味関心ゾーンを知ることができます。これは2~5歳の認知発達のデータベースに基づいており、同アプリではそのゾーンを、話すことや表現することが得意な「おはなしだいすき」、数を数えたり予測したりすることが得意な「すいりめいじん」、誰かの役に立つことが好きな「おせわだいすき」、おもちゃの分解など物事のしくみに興味がある「ものしりはかせ」の4つに分類。

 「今の子どもの興味を知り、声がけや経験を通じてすべての領域をあまねく経験することで幼児期の土台をつくる。それが子どもの可能性を伸ばしていくことにつながる」

 例えば電車が好きな子どもの場合、運転手や電車が走るしくみなど多面的な視点から興味を育み、次はそれを人に伝えるために表現する……というように、その発達は螺旋的。子どもの「今」を知ることの大切さがよくわかります。

 同診断は、子育てにおける保護者の不安を安心に変え、子どもの育ちを高めるための要素が満載。保護者支援や子どもの発達支援にぜひご活用ください。

使い方

Webサイトからユーザー登録をしましょう(登録無料)。登録には、ニックネーム、メールアドレス、パスワード、郵便番号が必要です。選択式の設問55問程度に回答すると、今の親子関係のタイプと子どもの興味関心ゾーンが表示されます。

オヤトコ診断

 

執筆者
服部由実

編集長。企画・取材を担当。IT企業の広報部門に所属し、社外広報や採用活動に取り組んでいます。

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