現役演劇人による演劇メソッドを活かした研修 保育者自らが表現豊かに

「大好きな木の下が私の部屋」という同じシーンでも、動きがあったり静止したものであったりと、チームによって表現は様々。一方のチームでは木を表現する保育者が後ろから主人公を取り囲むように前のめりになり葉や枝を表す腕と手を降っていた(左)のに対し、もう一方のチームでは後ろを向いてそっとたたずむように木を表現(右)していた
 11月22日、園児たちの降園後、原町幼稚園では保育者の研修が行われていました。その内容は、演劇のメソッドを取り入れて、想像力や表現力、コミュニケーション能力を向上させるものでした。

 「あさになったので まどをあけますよ」。絵本のセリフとともに、保育者たちそれぞれが身体を動かします。1人は山を、もう1人は木を、さらには川の流れやそこで泳ぐ魚などを身体いっぱい使って表現します。これは、1冊の絵本「あさになったのでまどをあけますよ」の物語をもとにお芝居を創作するという研修です。

 教育方針の1つに「自分らしく」を掲げ、日頃から子どもたちの主体性を伸ばすことに力を入れている同園。そうした中で、現役で演劇界に携わっている林洋平さんが指導する子どもや教員向けの研修「ファンプレッション(fun:楽しみとexpression:表現からできた造語)」に出会いました。「いろいろと子どもの活動が制限される世の中で、子どもが本来持っている『表現する力』『表現することは楽しいという気持ち』を引き出すことが大事」と活動をする林さんに共感し、今回の教員向けの研修が実現。子どものその力を引き出すためにも、保育者自身が、より表現豊かに接することができることを目指しています。

 同園が受けている教員向けの研修は全部で4回。これまでは、「シアターゲーム」と呼ばれる集中力や演技力向上のための様々なワークをメインに実施し、今回の第3回目で、お芝居の創作に取り組みました。お芝居の題材となった絵本は、当日知らされたもの。同園勤務の13名に、同一敷地内にある原町保育園の保育者3名が加わって、16名の保育者たちが8名ずつ2チームに分かれ、絵本で描かれる各シーンを想像し即興で表現します。複数チームで行った同研修で明らかになったのは、各チームの表現の違い。「木の下」という描写1つとっても表現が異なっていました。参加した保育者からは、「自分の中のイメージを共有できて楽しかった」「他チームのお芝居を見ることで、自分の表現が他の人にどう見えるかという視点も得られた」と声が挙がりました。

演劇のプロが教える「表現を楽しむ」

経験を活かして指導する林さん(右から2人目)

 同研修を指導する林さんは、長年演劇界に携わりながらも、アソブロック株式会社(東京都新宿区)に所属し、演劇のメソッドを活かした研修「ファンプレッション」を企画・提供しています。同園の鶴谷主一園長は、「現役のプロに指導いただくことに価値がある。表現することに対して様々な手法を教えてもらえてありがたい」と語ります。

 「演技をすることは、コミュニケーションを取ることと同じ。セリフをただ言うのではなく、その背景や心情、相手にどう影響を与えるかを想像して表現することが大事であり、それは日常的なコミュニケーションにも言えること。そこを意識して、発想力と想像力を使い、表現を楽しんでほしい」と話す林さん。今回の研修でも、保育者は表現することへの楽しさを感じているようでした。

原町幼稚園
ファンプレッションについてはこちら
執筆者
八木侑子

2・4面担当のパステルIT新聞編集スタッフ。ライティングだけでなくデザインも担当しています。

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