子どもたちの日常の記録を「作品」に 写真展開催や映画制作

「私の園の子どもたち2013」と題して杉並区のギャラリーで開かれた写真展。連日、保護者や地域の人々が足を運び、子どもたちのユニークな表情を捉えた写真の数々に癒されていた
東京都杉並区の住宅街にありながら、屋敷林に覆われた自然豊かな中瀬幼稚園。周囲の環境が変化しても、変わらぬ子どもたちの遊び場がそこにあります。子どもたちのための環境を守り、その成長を育んできた井口佳子園長にお話を伺いました。

 今秋、中瀬幼稚園が主催する写真展が東京・杉並区のギャラリーで開かれました。写真は井口園長の作品で、子どもたちが園庭である屋敷林の四季を全身で感じながら自然に親しんでいる様子を収めたものです。井口園長は2年前からデジタルカメラを使っていますが、長年愛用していたのはキヤノン製のフィルム式一眼レフカメラ「FTb」。「デジタルカメラになり、撮り直しができるようになったことは便利。ただ、フィルムカメラの時の方がシャッターを押す時、1枚に集中していた」と井口園長。シャッターを切る瞬間には、「今」という一瞬を大切に、愛おしく想う気持ちが込められます。デジタル社会においても、この「アナログ感覚」を失ってはならないのかもしれません。

 中瀬幼稚園では落語家や講談師を招いて話芸に親しんだり、井口園長のお父さんの宝物だった映写機で上映会を開いたりします。「この時は園長先生から『江戸時代の生活をしてみよう』と言われて、甚平と下駄で塩むすびを持って登園し、電気のない生活をしたんですよ」。作品展に来場していたお母さんが楽しそうに話してくれました。自然に守られたこの空間だけ、時間の流れが特別なようです。

いつもの暮らし映画に

季節がめぐり、園庭が様々な表情に変わる中、子どもたちもまた、それぞれの時間を自由に楽しみながら、豊かな表情を見せて成長をしていく、中瀬幼稚園の「いつもの暮らし」。井口園長がこれをドキュメンタリー映画にすると決めたのは2009年2月でした。
 
 制作会社は東京・新宿区の映像制作プロダクション「グループ現代」。卒園間近の子どもたちに1カ月間密着し、撮影されました。スタッフが園を訪れても、カメラを向けられても、子どもたちは常に自然体。自分のペースで、いつものように遊んでいました。保護者たちも全面的にサポート。井口園長の穏やかな語りが添えられ、3カ月後の5月に映画「風のなかで」が完成しました。園内で行われた試写会では、子どもたちも保護者たちも先生たちも大興奮でした。日常生活のシンプルな記録が、映画というひとつの「作品」になったことで、新しい世界が広がったのです。世の中の「記憶より記録」に逆行し、「記録から記憶」へ。日常の記録を作品にすることで、それは特別な体験となり、多くの人々の心にメッセージを深く刻むことができます。

子どもたちの日常の記録を「作品」に 写真展開催や映画制作(サブ)
▼「風のなかで」(78分)
自主上映団体を募集中。上映日の10日前までに申し込みをすれば、DVDを借りられます。費用は50,000円。問合先は「株式会社グループ現代」(03-3341-2863)まで。

執筆者
鈴木あゆみ

パステルIT新聞編集長。特集の企画・ライティングほか、紙面全体の編集を担当しています。

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