商品化と販売を体験するプログラム リアルお店やさん体験

日頃から野菜を育てる活動をしていた子どもたち。今回の「キッズモール」は、「育てる」に続く取り組みとして自然に受け入れられ、商品化と販売のストーリーを体感してもらえた
園と家庭の連携プロジェクトで子どもの自立と母親の社会化をサポートしようという試みが横浜で動き出しています。仕掛け人は一般社団法人家族力向上研究所の桑子亞希子氏。様々な社会的な課題を解決するための新たな試みを取材しました。

 幼稚園と関わるようになって15年の桑子氏。ここ数年、母親の過干渉によると見られる子どもの自立の遅れや、ママ友同士のトラブル、保育料の滞納など家計に絡む問題で、先生が対応しきれないような窮地を目の当りにしてきました。そこで、アンケートやインタビューを実施し、解決の糸口を探り、先生や保護者向けにコミュニケーションやマネープランの講座を実施してきました。

 そして、たどり着いたのが「キッズモール」です。これは子どもが主人公になってお店を運営することで自立や生きる力の土台となる「食」と「お金・モノの価値」を考え、実践するワークショップ。大人たちは子どもたちのサポートや見守りを通じて学びの機会を得ます。

 初回は今年8月、食品メーカーや生命保険会社など七社の協賛を受け、船橋市内の私立幼稚園にてアフタースクールの小学1、2年生(約60名)を対象に開催されました。事前に趣旨を説明し、子どもたちに商品や店名決めを依頼、当日は食育専門家の指導に基づき、おにぎりやパンケーキ、パフェを製造。本物のお金で販売を実施しました。お金のプロの支援も受け、閉店後は売上・利益の計算、利益還元までも体験する内容です。

学ぶ子どもを見て学ぶ

 「疲れたけど楽しかった。またやりたい」「子どもたちの意欲と行動に驚いた」「次も参加させたい」。初回のアンケート結果は予想以上に満足度の高いものでした。桑子氏は「専門家のサポートを受けながら『本物体験』をすることで、子どもたちがお金の価値や働くことの大変さに気づき、家庭でも行動や発言が変わったという声が多かった。また、先生や母親は、専門家が子どもたちに大切なことをどんな言葉で説明するのかも勉強になったようだ。今回は先生にサポート役をお願いしたが、保護者にもサポータープログラムを受けてスタッフになってもらい、子どもたちとの会話を楽しみながら食や経済について学べる機会を提供していけたら」と語ります。
 
 同プログラムは横浜市経済局によるサポートを受け、来年2月までに横浜市を舞台に拡大モデルが実施される予定。自らを「平成の世話焼きおばさん」と称する桑子氏。保護者と先生の理想的な連携をめざして。昭和の時代に子どもたちを育んでくれた人々の魂を引き継ぎ、子どもたちを取り巻く環境問題と向き合う活動が今、始まりました。

桑子さん
一般社団法人家族力向上研究所 代表理事 桑子 亞希子 氏
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産業カウンセリング資格取得。家族療法を学んだ家族関係や子育て環境の専門家。子育て家族を対象にしたイベントや幼稚園教諭向け研修で大人気。
http://www.kakoken.com/ 【問合】045-264-4664

執筆者
鈴木あゆみ

パステルIT新聞編集長。特集の企画・ライティングほか、紙面全体の編集を担当しています。

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