クラウド型園児管理が現場の課題解決 慣習を改める仕組みに

セミナーで発表されたスライドの一部
11月21日、東京国際フォーラムで開かれた「選ばれる幼稚園の仕組み公開セミナー」で「私の幼稚園がクラウドシステム導入を決めた理由」を講演した学校法人原田学園 みたけ台幼稚園の主事、木下泰さん。今回はそのダイジェストです。

 横浜市青葉区は、文字どおり緑豊かで静かな街。この街に開園して40年のみたけ台幼稚園は、平成25年度に園児数が473名となります。

 以前からパソコンが数台、ネットワーク環境もありましたが、職員のITスキルはほぼゼロ。メールシステムも10年前に導入していながら活かされていないのが実態でした。

 民間企業から転職して同園に勤務した木下さんは、主事としての幅広い実務を経験する中で、エクセルによる文書テンプレート作りや印刷物のカラー化など、自園でできる範囲でITの事務的活用を進めてきました。ただ、園が抱える5つの課題(上記図参照)にどう対処するべきか。このことにはずっと頭を悩ませてきました。

 あるとき、ITの世界で話題になっていた「クラウド」という言葉が目に留まりました。「クラウド」とはインターネットを介してシステムを使い、データを管理することを指します。「子どもたちの最新の情報を一元管理して、それを職員がいつでもどこでも確認できる環境ができたとしたら」。木下さんは、クラウド対応の園児管理システムによって、5つの課題を解決する糸口を見出しました。

クラウド型園児管理が現場の課題解決 慣習を改める仕組みに(サブ)
セミナー当日、ユーモアを交えて講演する木下さん。

職員の意識「外向き」に

 園児管理導入に合わせてパソコンは園内に分散して配置しました。園児情報は一元管理されたので修正は最小限。個人情報の修正漏れによるトラブルはなくなりました。

 クラウド化したので職員とはいつでもどこでも情報が共有できます。事務員の仲介がなくても担任が直接行動を起こせるようになりました。担任だけが携帯していた「子どもが急病になった時にかかる病院リスト」も集約し、誰でも緊急対応ができるようにしました。

 無駄な作業が減らせたことで職員の帰りは早くなり、情報漏洩や紛失のリスクも激減しました。面倒だったバスコース作成も予想以上に楽になりました。

 職員が扱う情報は増える一方です。「ITが得意・不得意という次元ではなく、内向きな作業を減らして職員の意識や行動を外向きにするためにITを活かしたい。職員の負担を減らし、心に余裕を与え、子どもたちや保護者に気持ちを向けてもらえたら」と木下さんは語ります。こうした想いと行動が「選ばれる園」の環境づくりにつながっているのかもしれません。

執筆者
鈴木あゆみ

パステルIT新聞編集長。特集の企画・ライティングほか、紙面全体の編集を担当しています。

注目の話題