こころ弾む 園庭あそび

自然の面白さを身近に感じられる園庭

 海洋生物学者のレイチェル・カーソンが提唱した「センス・オブ・ワンダー」。それは、誰もが生まれながらにして持っている、自然の神秘さ・おもしろさ・不思議さを感じ取る感性のこと。レイチェルが甥のロジャーに贈った著書『センス・オブ・ワンダー』は、ロジャーとレイチェルが海辺や森を探検し、星空や夜の海を眺めた経験をもとに書かれた作品で、多くの保育者が保育の原点と共感する1冊です。

 子どもだけでなく大人の自然体験の希薄さが問題となっている現代において、このセンス・オブ・ワンダーを育む園庭づくりや園庭あそびを提案しているのが、㈱こどもみらい(兵庫県)。代表の廣瀬泰士さんは、「園庭には多くの命が満ち溢れている。子どもたちが四季折々の命と触れ合い、驚き・感じることで感性が育まれる」と語ります。園庭づくりでは、「自然とふれあえる環境をつくりたい」「トンネルがほしい」といった園のニーズを丁寧に深掘り。保育者と対話を重ねたり、現場をその目で確認したりしながら、ビオトープ池やレンギョウをアーチ状に育てたトンネルなど、「自然×冒険」をテーマとした園庭を提案しています。

園庭で、子どもたちの世界を広げる

 しかし廣瀬さんは、「環境を整えるだけでなく、レイチェルがロジャーの興味を引き立てるような声がけをしたように、ロジャーの世界を広げるような人の存在が大切」と続けます。

 そのエピソードとして廣瀬さんが教えてくれたのは、植栽の手入れに園を訪問したときのこと。ビワの葉を集めて処分しようとしていたスタッフが、ダンゴムシを探している子どもにかけたある一言でした。

 「ダンゴムシを集めたいんだったら、ビワの葉をお布団みたいに重ねて水で濡らしておくと、次の日に葉の裏にいっぱいおるで」

 翌日、スタッフの言葉どおりにダンゴムシが集まっていて、子どもたちも先生も大興奮だったそうです。

 「こうした感動から生き物の生態を知る。自分自身で模索しながら発見や驚きに出会う楽しさを提供したい」と廣瀬さん。同社の著書『園庭づくりのヒントがいっぱい こどもが遊べる木と草花』は、まさに園庭に広がる世界に五感を澄ましたくなる1冊です。

『園庭づくりのヒントがいっぱい こどもが遊べる木と草花』

四季を通じて遊べる木や草花を紹介。子どもの感性を育む園庭づくりのヒントが詰まった1冊。

著/廣瀬泰士 林由加里
出版社/小学館スクウェア
定価/1,650円(税込)

執筆者
服部由実

編集長。企画・取材を担当。IT企業の広報部門に所属し、社外広報や採用活動に取り組んでいます。

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