保育職場の働きやすさ考えるシンポジウム 大阪・愛知・静岡での事例に学ぶ

黒澤祐介氏(大阪青山大学 准教授)
(一財)大阪保育運動センター 大阪保育研究所「保育士の働きやすさ研究会」が6月1日、大阪市内で開いたシンポジウムには、保育者・研究者・学生が集いました。

 「保育職場の働きやすさを考えるシンポジウム」は、黒澤祐介氏(大阪青山大学 准教授)、蓑輪明子氏(名城大学 准教授)、神谷恵理氏(静岡県藤枝市児童課子育て政策係主任主査)がシンポジストを務め、大阪・愛知・静岡各地における調査や啓発事例が共有されました。 

 まず、黒澤氏からは大阪市内公・私立保育所等の正規職員272名のアンケート調査結果が報告されました。これによると、保育者が働きやすい職場を実感する3つの要因は「休暇」「労働時間」「人間関係」であることから、休暇の取りやすさ、労働時間の抑制、職場の人間関係の向上を対策の柱とし、完全週休2日制の実現と休暇保障のための配置基準の見直し、市町村独自の人材確保システムの構築に取り組むべきとの提言がされました。     
 続いて、蓑輪氏からは愛知県下36自治体で実施した保育労働実態調査の結果が発表されました。この結果、「勤務時間前の時間外労働あり(74.5%)」「勤務時間前の時間外労働の支払いは全くついていない(74.1%)」「休憩がほぼ毎日自由に取れない(56.3%)」「事務仕事が常に終わらない(44.9%)」など、疲労感や負担感を抱えた労働実態が浮き彫りとなりました。蓑輪氏は保育の地域間格差拡大防止のためにも、国や自治体による保育者の処遇や配置基準の改善が急務と語りました。

 最後に、神谷氏が藤枝市内の私・公立全ての園で取り組んでいる働きやすい職場づくり事業について報告をしました。同会代表の黒澤氏は、「今こそ、社会全体の状況も踏まえながら保育者の働きやすさを問い直し、日本の未来を考えていかなければ」と語りました。

執筆者
鈴木あゆみ

パステルIT新聞編集長。特集の企画・ライティングほか、紙面全体の編集を担当しています。

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