超情報化社会を「生きる力」を育む
新学習指導要領の改訂によって、未知の状況にも対応できる「思考力、判断力、表現力」が重視されるようになり、従来の教育法は大きな転換期を迎えています。
例えば、グローバル化やビッグデータ、AIなどの技術革新が急速に進む社会は、未来予測が困難な時代。従来の教育で重視されてきた「1つの正解を導く力」だけでは、これからの超情報化社会を生きる力を十分に育むことはできません。
そうした中、国内だけでなく世界から注目を集めているのが「くぼた式育児法」です。同育児法は、脳科学の世界的権威である久保田競氏と妻である久保田カヨ子氏が30年前から始めた「賢い脳を育てる育児法」。脳科学研究の専門知識と実際の子育て経験をもとに開発されました。
「同育児法における『賢さ』とは、単にIQや偏差値が高いということではない。直面した問題の本質を見抜き、問題の解決方法を考え、行動を起こす力を育みたい」。そう語るのは、くぼた式育児法をカリキュラムとして提供する株式会社城南進学研究社の葦澤久美子氏です。
最も脳が発達する0歳のチャンスを逃さない
生まれたばかりの赤ちゃんの脳には140億個もの神経細胞があるものの、まだそれぞれが分離しているため、機能していない状態。神経細胞をつなぐ役割を果たすシナプスが増え、神経回路が密になることで、脳はより多面的に、より活発に働くようになります。賢さとは、神経細胞の数によるものではなく、神経回路の密度によるもの。「見る」「さわる」「聞く」といった五感を働かせた新たな経験をすることで、シナプスを増やし、神経回路を増やしていくことが大切です。
同育児法が「0歳からの育脳教室」と強調する理由は、0歳が最も脳が発達する時期のため。人間の能力の基本となる重要な脳の回路は1歳までにはほとんどできあがります。そのため、生後すぐの赤ちゃんの頃から、五感に働きかけ、脳を発達させるためにどのような刺激を与えるかがとても大切です。また、知的活動の基礎となる「考える」「創造する」「行動を決定する」というような、脳の中でも高度な働きをする「前頭前野」を徹底して鍛えることも同育児法の大きな特徴。月齢毎の具体的な働きかけの方法を学ぶことができるのです。
保育者の変化が子どもの成長に
特に手は、競氏が著書の中で「手は外部の脳」と表現するほど、神経が集中している部分。そのため、同育児法のカリキュラムには、四角の箱に9つのカラーボールが隙間なく敷き詰められており、指先を使わなければボールを取り出せないようなおもちゃ「ナインボール」など、遊びの中で自然と指先を使う工夫がされています。
「大切なのは、繰り返し刺激を与え、回路を密にすること。せっかく新しい回路ができても、使わなければなくなってしまう。カリキュラムはあくまで入口として、いかに日常の保育に落とし込むことができるか、工夫を凝らしてみてほしい」と葦澤氏は語ります。中には、〇・△・□の形の違いを視覚的に認知し、仲間分けするカリキュラムを、「時計」「窓」など、園内にあるモノからそれぞれの形を探すという遊びに発展させた導入園もあり、保育者自身に創意工夫が生まれているそうです。
近年は中国、台湾などアジア圏からの問い合わせも急増。最新の脳科学研究では、五感が著しく発達する特別な時期(感覚敏感期)は6歳頃には終わりを迎えるということがわかってきました。生きる力につながる本来の「賢さ」とは何か。30年以上前から提唱されてきたくぼた式育児法が今、世界中で注目されています。