ボルダリングで落っこちる経験 身体能力を培う場を

左端から右端に移動する

 2020年の東京オリンピックの追加種目に決まったスポーツクライミング競技。三年程前から全国各地にジムができはじめ、認知度が高まっているボルダリングは、筋力よりも全身のバランスや柔軟性を使って登ることから、老若男女問わず好まれています。そんなボルダリングを遊具に展開したのが、スポーツ遊具「クリムボン」です。

 「クリムボン」は、設置が簡単な室内用クライミングボード。雨、雪、炎天下など、天候に左右されずに、体を動かす環境を子どもたちに提供できます。大掛かりな工事は必要なく、壁に上レールを固定して、そこに高さ1.82m、幅0.8mのボードをはめ込むだけ。その後取り外すこともできます。設置した各ボードは約450kgまで耐える強度で、複数の子どもたちがつかまっても安全。設置場所の広さに応じて、ボードの数を増やせるほか、イベント時にはレンタルもできます。

 初期状態では、掴んだり足を置いたりする「ホールド」がすでにボードに配置されており、難易度の異なる三種類のチャレンジコースに挑戦できます。後にコース変更も自由自在。付属する三種類の「プレイカード」を使ってゲームもでき、運動に自信がない子どもも楽しめます。

 靴紐が結べない、スキップができないなど、子どもが自分で身体を操る能力の低下が近年指摘されています。古来より子どもは、豊かな自然の中で石垣を登り原っぱを走り、落ちたり転んだり、あるいはケガをして、自然に身体能力を培い、健全な心身を発育させてきました。しかし、都市の発展や生活機能の向上と引き換えに、それらは身近では経験しがたい環境になりつつあります。「その失われつつある価値を明確に掬い上げて保全し、また代替し得る効果を創出し、子どもたちへ供与することが大人の義務であり、当社製品開発のフラッグシップだ」。開発者である(株)ダイナマークスの佐々木幸一代表取締役はさらに続けます。「最近の子どもたちは、こういう少しだけ危ない遊びをする機会が少ない。幼少期にそういう経験が無いから、成長しても危険を回避できない。だからこそ、“落っこちる練習”が必要なのでは?」。今の時代にもマッチしつつ、身体能力を培う機会を創出していきたいものです。

クリムボン
執筆者
八木侑子

2・4面担当のパステルIT新聞編集スタッフ。ライティングだけでなくデザインも担当しています。

注目の話題