屋敷林の自然に守られた空間で生活する中瀬幼稚園の子どもたちが、四季を体全体で感じながら、仲間たちと遊び学ぶ日常を紹介する場。それが「幼児の生活と表現展」です。「作品をきれいに飾っていた時、井口園長に『表現展は作品を立派に見せる場ではない。3歳児らしく、楽しく過ごしたことが伝わるように展示しては?』と言われてハッとした」と語るのは年少組の関先生。ありのままを伝えられるように展示を工夫しました。
「今から担任の話を始めますので、よろしかったらこちらへどうぞ~」。当日、各保育室では担任が来場者に直接語りかける時間が15分ほどあります。「たくさん収穫できたお芋を描いていたら、電車に見えてきたしゅうくん。ガタンゴトンと勢いよく走らせたら、画用紙全体がお芋色になってしまいました」「カメのトントから伸びている線は、子どもたちが慈しんでなでている気持ちの表れです」「ヒヨドリが窓ガラスに当たって命を落とす事故に直面し、子どもたちは人間が造ったものによる悲劇を知りました。だからバードセーバーをつくりました」「園庭で地中からのぞいた水道管を守るため、一年かけて知恵を絞りました」「拾った栴檀の実を絵の具で塗り始めたお友だちを真似て、みんなも思い思いの色で塗り始めたんです」「ヒヤシンスの名前を考えていたら、全員の案をつなげる話に。長い名前にちなんで『寿限無』も覚えてみました」。
場面を思い浮かべながら活き活きと話す先生たち。その声に耳を傾け、世界に引き込まれていく来場者たち。そして、子どもたちがあそびの中でできること・やるべきことを見つけ、主体的に行動しているということや、道具の大切さ、万物への感謝、生きるための知恵を仲間たちと共に学んでいることに、感動の声が上がっていました。それは、担任の先生にしか語れない内容でした。
「広めたい。この感動を」
感性豊かな表現は、新たな表現を生みます。井口園長のファン歴25年のふむふむさん(ハンドルネーム)は、その日のうちにこの感動をブログやフェイスブックで多くの人々に伝えました。2009年、同園が制作したドキュメンタリー映画は全国で自主上映されています。映画で子どもたちの活動を知り、心動かされた人々も、そのことをインターネットで発信しています。
誰もが気軽に想いを表現できる時代。子どもたちが教えてくれる大切な何かで、インターネットの世界を美しい虹色に染めたいものです。