厚生労働省は、50名以上を有する事業所に年1回のストレスチェック実施を義務化しています。しかし、厚労省が作成したストレスチェックは一般職向けであるため保育者の心理状態を測りにくいことが現状です。
そうした中、園の巡回相談を行うRinDa臨床心理士ルームでは、園業務に特化した保育ストレスチェックアプリを開発。「今の自分のクラスは保育がやりやすい」「行事が多いと思う」「保護者対応が大変だ」など、実際の保育活動に基づいた約56の項目に2択で回答するだけで、自身の心理状態を把握できます(診断結果は本人にのみ送られます)。「自身の結果や園の平均値からストレスレベルをより客観的に認識できるようになる」と、これまで100以上の園で実施されています。
導入した社会福祉法人高砂福祉会では、職員が自身のストレスと上手く付き合えるようになり、1年後には全ての項目でストレス数値が減少。篠塚理事長は、「職員がキャリアをあきらめずに、いきいきと自分らしく働けるようになった」と効果を実感したそうです。
ストレス状態を知ることで、園の職場環境が改善
さらに、同アプリは職場の環境改善にも効果的。集団分析(10人以上の診断結果が必要)により園全体のストレス傾向を把握でき、自園の課題解決に役立てることができます。
例えば、ある園では、「休憩時間が取りにくい」という声が多かったことから、お昼に1時間の休憩時間を確保。休憩中の外出も可能にしたところ、翌年の数値が大幅に減少しました。育児や介護のために一時的に自宅に帰る職員もおり、ワーク・ライフ・バランスが整ったことで離職率が減少し、加えて出産後の復職率も高まったそうです。
臨床心理士の関谷代表は、「悩みを外に出していかなければ、睡眠障害やうつ状態など、身体に影響が出てしまう。まずは自分のストレス状態をアプリで知ってほしい」と想いを語りました。RinDa臨床心理士ルームでは、今後も園の職場環境改善に取り組んでいくとのことです。
RinDa臨床心理士ルーム(東京都)
園に特化した専門性の高いスタッフを有し、ストレスチェックの他に、保育園や幼稚園の巡回相談、保健所の心理判定員、セミナーやカウンセリングなどを実施。
文・山口捺暉