ChatGPTは優秀なアイデアマン
視座高め、働き方を変える生成AIの世界観

ChatGPT無料版(GPT-3.5)は会員登録をするだけで利用できる。ただし、今後の学習データとして使われる可能性があるため、利用の際は機密情報を送らないなどの注意も必要。
 膨大な学習データをもとに文章や画像を生成するAIの活用が加速しています。園向けにAIセミナーを開催した株式会社シンクアロットの漆間康介さんに保育現場におけるAIの可能性を伺いました。

この記事のポイント

  • 生産性や働き方に変化をもたらす? 生成AIの世界観
  • 教育現場で進むAI活用事例。求められるのは、AIを使ってそのとき必要な情報を引き出す力
  • ChatGPTを上手に使うコツ。プロンプトの書き方で、AIの回答も変わる



 「日本の七夕に類似する世界各国のイベントを10個教えてください」「もちろんです。以下は、日本の七夕に類似する世界のイベントの例です。1中国‥‥」

 上の図はAIチャットボット「ChatGPT」との会話履歴です。まるで人間と対話しているかのような言語処理を可能にしているのは、AIの中でも機械学習やディープラーニングと呼ばれる領域のAI。人間の言葉に対し、AIが教師データと呼ばれる膨大な学習データから法則を予測し、応答します。ChatGPTが学習するデータはインターネット上の情報すべてで、知識レベルはMBAの最終試験や司法試験に合格するほど。文章を要約したりアイデアを考えたりするほか、プログラミングのコードを書くこともできます。多くの業界で生産性や働き方に変化をもたらすと期待される「生成AI」と呼ばれる技術です。

 「これからの子どもたちは生成AIが当たり前という世界観を生きていく。だからこそ先生たちが新しい世界観を知ることが大切」

 そう語るのは、「子どもの世界観を拡げる」をテーマに世界交流プログラムやSDGsプログラムを提供する株式会社シンクアロットの漆間康介取締役。漆間さんは、AIによる劇的な変化はすぐには起きないと予想しながらも、保育者に求められるスタンスに変化が起きるのではないかといいます。

 「ChatGPTのような生成AIの登場によって、『知っている』ということ自体に価値がなくなっていく。0から1で物事を考えるのではなく、AIを使ってそのとき必要な情報を引き出し、子どもたちの学びが深まるようにサポートする関わり方に役割が変わっていく可能性がある」と漆間さん。

 教育現場におけるAIの活用も進んでいます。学習塾では、子ども一人一人の学習進捗や間違えやすい問題をAIが学習し、それぞれのレベルに沿って問題や適切なヒントを出力する教材の導入が広まっています。塾講師は子どもたちがつまずいたときに教えたり、励まし向き合ったりすることに集中できるようになりました。同様に、小中学校・高校においても、生徒の学習状況などのテスト要件に応じてAIが問題や選択肢を生成するしくみを実験的に採用するなど、新たな試みが進められています。

ChatGPTは優秀なアイデアマン

 働き方や学びの質をも変え得る生成AIの世界。中でも、無料で利用できるChatGPTは「自分とは異なる観点を教えてくれる優秀なアイデアマンになり得る」と漆間さんはいいます。その際にコツとなるのは、前提となる条件や目的、参考情報を具体的にAIに指示すること。プロンプトと呼ばれる指示文を工夫しながら対話を繰り返すことで、求める答えにより近い回答を得られるようになります。

 「行事のアイデア出し、子どもたちの疑問や悩みに答える上でのヒント、文章を要約したりするときに活用できる。いずれは一人一人に合った細やかな保育計画を作成したり、保護者からの問い合わせをAIがチャットで応答するような未来が来るかもしれない」

 保育者の世界観が「子どもたちに教えられる世界観」。ChatGPTは保育者がAIの世界を身近に触れ、思考を開く一つの手段となりそうです。

株式会社シンクアロット 取締役 漆間康介さん

 前職のアビームコンサルティング時代は、AIやデジタルを活用した新規事業やコンサルタントに携わり、その後現職。園向け世界交流プログラムやSDGsプログラムを提供している。

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執筆者
服部由実

編集長。企画・取材を担当。IT企業の広報部門に所属し、社外広報や採用活動に取り組んでいます。

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