バス運行を見守る第二の目 実証実験で精度高める

(上)パイオニア㈱社員から製品の説明を受ける榎本園長/(下)NP1本機はバスのフロント部分に設置。置き去りを感知した際は警報音が届かない場合を想定し、最大5名に警報開始のSMSを通知
 車内置き去り防止安全装置の設置義務化を受け、園ではバス運行業務の見直しや安全装置の検討が進められています。そうした中、川越幼稚園はパイオニア㈱による安全装置の実証実験に参加しました。
    この記事のポイント

  • 降車時確認と自動検知の2種類の機能で置き去りを防止する「NP1」
  • 園に寄り添った設計で、園バス運行の悩みを解決する頼もしいパートナーに
  • バス置き去り防止装置の選び方。パイオニア㈱の挙げる3つのポイントとは?


 
 「置き去り事故のニュースを受けて、日頃の複数人での乗降確認と職員同士の連携が園児の命につながっていると強く感じた」

 そう語るのは、川越幼稚園の榎本円園長です。保育者不足が深刻化する業界の現状において、2023年4月より義務化となった車内置き去り防止安全装置は園児の命を守るための第二の目になりうるといいます。

 2023年2月、同園が参加したのは、パイオニア㈱の車内置き去り防止安全装置「NP1 特別仕様」のセンサー精度向上を目的とした実証実験です。同装置は一般車両向けに販売されているスマート音声ナビ&次世代通信型ドライブレコーダー「NP1」をベースに、新たに園バス向けに開発されたもの。エンジンを停止すると降車確認を促すアナウンス機能(降車時確認式)と、センサーが子どもの泣き声と画像の両方で置き去りを検知する機能(自動検知式)を兼ね備えており、より確かな見守りができます。車内確認が行われなかったりセンサーが人を検知したりした場合は、車外警報とSMSで危険を知らせます。

 最大の特徴は、運用していくうちに機能が進化していくこと。クラウド上のAIが画像を学習し、車内カメラの自動検出はより高性能になります。

 「AIが精度の高い見守りを実現してくれるのであれば、これほど安心なことはない」

川越幼稚園の榎本円園長

 以前から車内での点呼と運転士・職員間の情報共有、園児同士での降車の呼びかけなど確認を徹底し、保護者から信頼を得ていた同園からも期待の声が寄せられました。

 さらに、機器を取り外すことなく通信によって機能の改善・追加が自動で行われるため、いつでも最新の状態で利用できます。プロジェクトを牽引してきたパイオニア㈱の宮部航太朗氏によると、SMS通知のほか、給油時に警報が鳴らないようにする一時停止機能やバッテリーの電圧低下警告機能、取り付け時間の短縮など、園の現場の声をもとに搭載した機能は多くあるそう。今後について宮部氏は「置き去り防止装置としての機能向上のみならず、園に寄り添った機能を取り入れながら園バス運行に関わる悩みを解決していきたい」と語ってくれました。

園の運用に合った安全装置を

 一方で、装置の選び方において榎本園長は「日常的に園児を見守る職員の負担にならないようなシンプルで誰でも安心して使えるものを選びたい。でも各社から装置の案内が届いており、どれを選べばよいのかわからないというのが本音」と不安を漏らします。

 補助金対象となるガイドライン適合商品について宮部氏は、「基本機能はほぼ横並び」だといいます。そうした中で挙げられたポイントは次の3つ。

 「1つ目に性能。降車時確認式と自動検知式、これらを兼ね備えた『併用式』はより高い性能で園児を見守ることが可能になる。2つ目は使いやすさ。日常的な利用を想定し、園に寄り添ったシンプルな設計であること。3つ目は信頼性。装置を長く、安心して利用するためのサポートが、選定時のポイントとして非常に重要と考える」

 今回、補助金で支給されるのは最大17万5千円。実際の運用や管理までを見通した装置選びがカギになりそうです。

川越幼稚園(埼玉県)

教育理念は「人間教育の探求」。春の芽吹きや秋の収穫など、四季を感じる自然園での活動を日常的に行い、自然と遊びを通じて培われる力を大切にしている。

執筆者
パステルIT新聞

「園づくり・人づくりを考える」をテーマに園に役立つITツールやサービスを紹介するIT専門紙。2008年創刊。全国の幼稚園・保育園・こども園と幼稚園教諭・保育者養成校、あわせて11,000施設以上にお届けしています。

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