園が障害福祉に参画 事業の多角化図る

障害福祉サービスの利用者数は10年で2倍に増加。障がい者が安心して暮らせる住まいが求められる中、安定した園経営や園の差別化に障害福祉事業へ参画する例が増えています。

 財務省の調査によると、障害福祉サービス等の利用者数、事業所数は2011年から約10年で約2倍に増加。年齢別の利用数も、2015年から5年間で18歳以上65歳未満は約13万人増加、18歳未満は約16万人増加と、18歳未満に関しては増加率が80%を超えます。

 「少子化にも関わらず、増え幅が著しい。発達障害や子どもの精神障害、知能指数が70前後の知的ボーダーと言われる子どもたちも増えている」

 そう語るのは、障がい者グループホームやデイサービスなどを手がける (株)アニスピホールディングス代表取締役社長の藤田英明さん。

 もともと2つの保育園を経営していた藤田社長は大学時代から社会福祉を専攻。25年以上に渡り、福祉に携わってきました。

 その経験と強い想いから、2016年に同社を設立し、「人間福祉と動物福祉の追求」という理念のもと、2018年にペット共生型障がい者グループホーム「わおん」を開始しました。

 その特徴は、「障がい者の住まいの確保」「空き家問題」「ペット殺処分問題」の解決を図ること。

 「わおん」では、障がいを持った方と動物が家族として一緒に生活。この同居する動物が保護犬や保護猫です。国内で年間4万頭もの犬や猫が殺処分される社会問題を受け、「1施設1頭ずつ、僕らが確実に保護していくことでその1頭の命を救える」と藤田社長は語ります。

 さらに、障がい者と動物との関わりについて、「動物と一緒に暮らすことで心が落ち着いたり、外に出かけたくなったり、生活の質向上につながる効果(アニマルセラピー)がある。特に精神的な疾患のある方や子どもは動物と相性が良い」と続けます。

 同社は「わおん」の取り組みを全国で展開。さらに事業に参画したい法人・個人を対象に、グループホーム新設のための事業計画や物件・人材の確保、運営ノウハウをゼロからサポートします。

経営の安定性と社会貢献の一手に

㈱アニスピホールディングス 代表の藤田英明さん。飼っている動物のほとんどが保護犬や保護猫なのだそう。

 「わおん」を始めてから2年。藤田社長のように、保育に携わっていた園経営者が障害福祉事業に参画するケースが増えているそうです。藤田社長はその背景について、「少子化により、園市場の縮小が予想される。複合的に新規事業を展開していくことがリスク回避につながる。経営の安定性という観点からも、近年需要が高まっている障害福祉事業への参入は期待が大きい」と話します。

 さらに、その副次的効果について、「園と障害福祉は遠い話のように感じるかもしれない。でも、園を卒業する子たちの中には発達障害や軽度の知的障害があるという子は多いと思う。障害福祉に興味を持ち、ノウハウを園に還元することで園の多様性や人材育成のキャパシティが広がる」と教えてくれました。

わおん公式サイト
プロに聞く! ㈱アニスピホールディングス

企業理念「人間福祉と動物福祉の追求」のもと、障がい者グループホームやデイサービス等を全国450拠点で開設。

執筆者
服部由実

編集長。企画・取材を担当。IT企業の広報部門に所属し、社外広報や採用活動に取り組んでいます。

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