この日、園児たちが遊んでいたのは木製ブロック「Zurenga(ズレンガ)」。前後左右、上下の面に計10か所穴の開いたブロックと、円柱の連結棒をつなげて遊びます。これは、長年日本の森と共に歩んできた株式会社浅尾(滋賀県長浜市)が「スケール無限大の知育・木製遊具」をコンセプトに、2018年に開発しました。積み木と違い、素材は軽く柔軟で耐久性に優れた杉でできており、園児が不意に落としても壊れない安心感があります。
同園の木船良元園長が気に入っているのは、シンプルなつくりとその素材感。限られたパーツで思うように組み立てるにはどうしたらよいか、園児たちは考えながら遊びます。連結棒が円柱のため、組み方を工夫すれば写真のように自由自在に曲がる壁をつくることも可能。数を増やすことで遊びの幅がより広がる点や子どもにやさしい木の素材である点から、園児たちが長年楽しめるズレンガの導入を決めたそうです。
「みんなで1つのものをつくって遊ぶほかに、自由遊びの時間には自分専用の椅子や家具をズレンガでつくり、おままごとに組み入れるなど遊びの展開が増えている。手先の模倣遊びで終わらず、等身大の大きさで実用できる形まで具現化していけるのがズレンガの魅力の1つ」と木船園長は語ります。
また、「創立して60年、命を大切にする保育を柱に、社会の変化に応じて様々な取り組みをしてきた。子どもの力で可能性を創っていけるように、命の息吹を感じられるような、本当にいいものを与えたい」と続けました。
子どもたちと林業の明るい未来を信じて
ズレンガのパーツは2つだけ。その理由をズレンガの発案者である株式会社浅尾の浅尾代表に伺いました。「以前、学童保育のボランティアで来ていた方々から『パーツがこれだけだと、子どもがいろいろ考えないと組んでいけない』『もっと部品の種類を増やしてほしい』という声があった。でもこれは、限られたパーツでどうやったらつくれるか挑戦していく遊びでもある。パーツを増やすのは簡単だけど、何も考えなくてもつくれてしまうおもちゃにはしたくない」と浅尾さん。また、「ズレンガは、遊ぶ人数や年齢によっても様々な展開があると思う。1人で熱中して遊ぶ場合もあれば、みんなで1つのものをつくる中で、年齢が上がってくるとリーダーシップを発揮する子が登場したり、協調性を学んだりする場合もある。子どもたちが自分で考えながら可能性を広げるのに役立てばうれしい」とズレンガに込めた子どもたちへの想いを語りました。
ズレンガにはもう1つ、浅尾さんの想いが込められています。ズレンガに使われている杉は柔らかく肌触りがよい素材ですが、日本で一番多い木材です。しかし、日本の林業は外材との価格競争に負け、総務省の国勢調査によると林業従事者の数は平成27年(2015年)には4万5千人にまで減少。山を管理する人間が減り、このままでは木が弱って山が死んでしまうというのです。こうした中、浅尾さんは杉の使い道や子どものおもちゃとして最適な形を試行錯誤。10年の歳月をかけて生まれたのがズレンガです。
ズレンガの詳細は、下記Webサイト内フォーム、またはお電話にてお問い合わせください。