この記事のポイント
- 最大震度7。お泊り保育の真っ只中に起きた被災経験をふりかえる
- 子どもの居場所をつくる。地震発生後2日で保育を再開した理由
- ICT化は災害対策の一環に。日頃進めていたICT化が功を奏し、安否確認もスムーズに
発生後2日で保育再開
2018年9月6日3時8分。地震発生時、はやきた子ども園はお泊まり会の真っ最中でした。井内園長は、「下から突き上げるような揺れに、園が壊れるかと思った」と振り返ります。転倒や落下物のない遊戯室で園児が寝ていたことは不幸中の幸いだったそう。井内園長は、唯一つながった通信回線を頼りに、スマホをすぐにテザリングし、インターネット環境を確保。保護者に子どもの無事をメールで連絡しました。
さらに、近隣の保護者から道路の壊滅状況を聞き、混乱を避けるために、「明け方まで園児を園に留める」ことを決断しました。そして、お泊まり会のために発電機や投光器、朝食、布団が揃っていたことから、明け方に園を避難所として開放。小学校が開放されるまでの数時間、地域住民約50名が集まりました。
――「PTSDを患ったのは、家にずっといた子だった」
園児が各家庭に帰った後、井内園長が思い出したのは熊本で被災した先生のこの言葉でした。井内園長は、子どもたちが家族との会話やテレビ・新聞から見聞きする情報が地震の話ばかりであることを想像し、子どもの居場所をすぐにつくる必要性に駆られたそうです。
しかし、職員も皆、「被災者」のため、保育者がいない状態。意を決し、園や園長のSNSで助けを求めたところ、道内外から初日に43人の保育者が集まり、発生から2日後に保育を再開することができました。
園の情報を守るICT 安否確認にも活躍
井内園長が強調したことは、ICT化が災害対策につながることでした。同園は、園児の個人情報などをクラウドで管理しているため、紛失の心配がなく、子どもや職員の安全確保を最優先できます。さらに、普段から職員間の情報共有として活用している園内SNS「nanoty」を職員の安否確認に利用。離れた場所にいる職員との連絡に役立ったそうです。
講演最後には、従来のルールが通用しない震災において、「新たにルールをつくるという経験は幼児の遊びに通ずるものがある。『決断できる大人』になるために、幼児の主体性を大切にしたい」と参加者に呼びかけました。