学習デジタル教材コンクール文部科学大臣賞をはじめ、数々の受賞に輝くつるみね保育園は、鹿児島空港から車で1時間半ほどの緑溢れる環境にありました。登園した子どもたちはその自然を存分に堪能するかのように、野山を駆け回り、新緑の木陰で先生方が奏でるギターやアコーディオンの生演奏をバックに大きな声で伸びやかに歌っています。種子島が近く、空を見上げればロケットの打ち上げを見ることもできます。しかし一方で、高齢化、少子化、過疎化も深刻です。「利便性のよくないこの地域だからこそ、子どもたちの未来創造のためにデジタル活用を進めることも急務と感じた」と杉本園長は語ります。
つるみね保育園のデジタル保育は、4年前から研究を続け、1台しかないiPad を月に3~5回、わずか15分だけの活用というスタイルで定着し、好奇心探究心を育んでいます。用意されるカリキュラムは実に多彩。テレビ電話を活用する「グローバルタイム」や「イングリッシュタイム」は、外国人とコミュニケーションを楽しみ、英会話の飛躍的な向上につながっています。「元気タイム」は、毎月、給食調理員が各地域の郷土料理の食材などを投影して食育を展開。「デジタルタイム」は、さまざまなアプリを活用するワクワク体験。そして、「プレゼンタイム」では、家庭から届いた手伝いや旅行などの写真を大きな声で説明。質疑応答や感想発表まで驚きの展開が見られます。このようなカリキュラムが各年齢の発達段階に応じて、年間で二百事例ほど考案され、全職員で担当して実践検証を重ねます。各種の活動で目にした笑顔と元気あふれる自然体の園児の姿に、「9割のアナログ保育と1割のデジタル保育」の成果を感じました。
保護者も学ぶ「スマホと子育て」
4月14日に、つるみね保育園では、インターネット安全利用の啓発活動を推進するNPO法人イーランチとウイルス対策ソフトメーカーの(株)カスペルスキーによる保護者向けセミナーを開催。セミナーのテーマとなった「スマホと子育て」という新しい課題は、都市部や過疎地などの地域差はあまりなく、働くお母さんたちは、仕事と子育てに忙しい日常の中で、ついスマホやタブレットに頼ってしまうこともあるようです。「子どもが小さい内からのスマホ利用には、抵抗があった」という参加者も、セミナー受講後には「家庭でルールを決め、セキュリティ対策をした上で活用をすれば良い、と感じて安心した」と話しました。「小さいときから親が側で一緒に教え、けじめをつけ、やがて自分自身で体や心を守れる『自律心』を育てよう」というセミナーのまとめには、多くの共感が集まりました。つるみね保育園では、あえて一台のiPadを順番に使うことで「自律の心」を育む機会を創出していたのです。