住宅街の一角にある園生幼稚園。駐車場には2525ナンバーのネコバス。掲示板にはサンタの壁面飾り。どこからかクリスマスソングも聞こえてきます。時計付きの小屋から現れた守衛さんは不思議の国の住人のよう。そこには園生ワールドが広がっています。
園庭を挟んで園舎と向き合うランチルーム棟の中心には厨房付きの約60名が集えるランチルームがあります。ピザ窯やコーヒーマシンも導入しました。「園児たちはもちろん、お母さんたちがお茶をしたり、テラスから子どもたちの様子を見守ったりもできる。9月のスーパームーンの夜には先生たちが自分の子どもたちを連れてきて賑やかだった」と語るのは幼稚園の池田副園長です。
園生幼稚園では、楽しい日常をみんなで共有し、一緒に大笑いをすることで信頼関係や他者への思いやりが育つと考え、計画的に楽しい非日常を演出しています。毎月の誕生会では手づくりおやつを味わうのが恒例。石焼き芋、鯛焼き、ポン菓子などをつくる本格的な機械は調理器具のイベントやかっぱ橋で揃えました。できるまでソワソワ、甘い香りに鼻をクンクンして、その過程もみんなで楽しみます。
園長室には謎の大ウサギがいます。季節の野菜を栽培する畑「SAKAS(サカス)」を守るのは人間と見間違えるほどリアルな案山子たち。案山子で町おこしをした話を聞き、笠川園長が梱包材などでつくりました。こうした日常の中にある非日常は「sonnou.today」ブログに綴られています。
五感で園生活の記憶蘇る
子どもたちを喜ばせたり驚かせたりする仕掛け人の筆頭は笠川園長。「何でもやってみないとわからない。いいことはすぐに真似をしてみる」。笠川園長はこう語ります。「園長の提案に当初はずいぶん驚いた。でも、最近では自分たちもすっかり楽しくなり、どうしたらもっと楽しめるかを考えてしまう。次から次に面白いことを考える園長はすごい」と話すのは保育園の落合施設長です。
「20年後、子どもたちが見聞きしたもの、ふとしたにおいや感覚などで園での楽しかった記憶を蘇らせ、懐かしく思ってくれたら」と笠川園長。
楽しみ、楽しませながらともに生きる発想こそが、何より大切な大人のコミュニケーション作法なのかもしれません。