子どもたちの個性が表れる作品展。
子どもたちの遊びの中には、造形遊びがたくさん含まれています。たとえば、砂遊びや泥んこ遊び、お絵かき、積木やブロック、粘土、様々な遊びも造形活動につながっています。そしてその遊びの中で、五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)を通して心を揺さぶられるような経験をさせてあげることが大切です。
私たち保育者は、その遊びをどう造形活動につなげていったら良いのでしょうか。まずは身近なものを使って遊んでいくと、イメージも膨らみ、普段の遊びからも展開しやすくなると思います。子どもたちの「こんな風にしたい!」「あんな風にしたい!」を一緒に体験しながら、アイディアやイメージのひらめきのお手伝いをしましょう。
クラスごとに作品のテーマを決める
各クラス、展示するテーマを決めます。はじめにテーマを決めることで、遊びから作品展へとつながる要素が見つけやすくなります。まず保育者が一番に考えるべきことは、『自分のクラスの子どもたちが今一番興味があることは何か。』です。
毎日の生活の中で、子どもたちが楽しんで遊んでいること、また興味を示していることはどんなことですか? 今の時点でなかったり、またこんな活動をさせたい! 感じてほしい! という思いがあるなら、これから考えて意識付けをしていってあげたら良いですね。テーマはできるなら、作品展直前に決めるのではなく、年度初めの年間計画を立てる時点である程度考えていると、年間を通してスムーズにつながりのある保育ができます。また、年長になると、子どもたちと一緒に話し合ってテーマを決めていくこともできます。
2~3歳児
見立て遊び、ごっこ遊びが始まり、盛んになってきます。そして、年齢が低い子どもは、生活に密着したものが一番興味を示します。そうなると、食べ物や動物などの生き物、お店屋さんなどは誰もが知っていることです。そういったものをテーマにすると進めやすいのではないでしょうか。
食べ物つくり(紙類・毛糸・粘土など)
食べ物をつくると言っても、様々な活動が組み込まれます。
丸める | 色紙やティッシュ、新聞紙、粘土などを丸める。 (団子・ミートボール・ハンバーグなど) |
---|---|
切る | 紙類を切る。 (ふりかけ・ラーメン・焼きそばなど) |
ちぎる | 手で紙類をちぎる。 (ふりかけ・ラーメン・焼きそばなど) |
くるむ | 色紙などで丸めたものをその上からでくるむ。 (野菜・果物・おにぎり・ハンバーグなど) |
つつむ | 色紙や新聞紙などでつつむ。 (お弁当箱・ラッピングなど) |
並べる | 皿や容器などに並べる。 (お団子・お弁当など) |
くっつける | 丸めたもの同士をくっつける。 (お団子など) |
貼る | のりやセロハンテープで貼りつける。 |
まぜる | 絵具や食紅を水に混ぜて色水をつくる。 (飲み物・スープなど) |
このような活動をしたものを組み合わせて、食品トレーやお弁当箱に見立てた箱などに自分で詰めるのもとっても楽しいです。ただ、ちぎっただけ、丸めただけというものでも、お皿や箱などの容器に乗せるだけで、イメージが広がりやすいものです。
粘土遊び
油粘土、土粘土、小麦粉粘土など沢山ありますが、2,3歳児には小麦粉粘土の感触が柔らかくて気持ちいいのではないでしょうか。小麦粉粘土は簡単に作ることが出来、ふわふわした感触がとっても気持ち良く楽しい粘土です。
材料は、小麦粉、水、塩、サラダ油、食紅や絵具。塩は防腐防止に入れますが、小麦粉の量の一割程度を目安にしてください。水以外の物をすべてボールに入れ、少しずつ水を足していき、ちょうど良い柔らかさになるまでよく捏ねていきます。種類か色を付けておくと、遊びの幅も広がり、見立てやすいです。ただ、小麦粉粘土を作る際、柔らかすぎると手にくっつき、固すぎるとポロポロで形にならず、楽しめません。
作品展で展示する場合は手づくりりの小麦粉粘土は数日たつとカビが生えたり、腐敗するので注意が必要です。できれば市販の粘土をおすすめします。
参考
4~5歳児
5歳児はもちろん、4歳児になると手先もしっかりしてきますし、発想も更に豊かになってきます。3歳児と同じ食べ物をつくるとしても、4歳児は3歳児よりも紙を細く切ったり、細かく切ったりと丁寧にできるようになるためより本物に近い仕上がりになります。そして、3歳児よりも少し発展させて、新しい素材に触れて取り組むことも成長を促すひとつの要素です。たとえば、はさみを使う際、今までは薄い紙ばかり切っていたのを、次は少し固いボール紙などを切ってみるのはいかがでしょうか。理解力もついてきますから、お話の世界をテーマにしても、色んな発想が生まれて遊びが広がっていくと思います。
木工遊び
- 材料探し
積木のような木片をたくさん用意します。遊びの延長で乗り物や動物、お家などをつくるのも楽しいです。何度か繰り返し遊んで、作品にするときはボンドを使ってくっつけて完成させていくのも達成感が生まれます。また、枝・葉・木の実などの自然物やハギレ等を組み合わせると、イメージも広がり楽しい活動になります。
- くぎ打ち
4,5歳児になると集中力も出てくるため、金づちを使ってのくぎ打ちなどを体験するのも良いのではないでしょうか。大きな板に、沢山釘打ちをしてビー玉ころがしなども楽しいです(コリントゲーム)。転がす時に可愛い音が鳴って楽しいです。また、転がすものを自分たちで考えたりするのも楽しいでしょう。どんぐりなど転がしても良い音がします。
土粘土
土粘土は柔らかさが自由に調節でき様々な感触を楽しめるため、遊びの目的によって使い分けることができます。泥んこ遊びのようにヌルヌルとした感触を味わう遊びが目的ならば水を足すなどして調節し、形にして遊ぶのが目的ならば手にくっつかない程度の固さにして使用します。また、大量で遊ぶのが楽しいため、お友だちとくっつけたり、踏んで広げたりとダイナミックな遊びができるため、共同製作にも非常に向いています。大きな物を作ったり、また、道を作ったりするのも楽しいですね。
5歳児
今までの経験を生かして、取り組めるような年長児ならではの遊びをどんどんさせてあげましょう。
お話つくり
初めは一枚のカードから始めてみます。次に、絵日記のように、絵やストーリーを描いていきます。文字が書けない子どもは先生が書いてあげても良いと思います。想像してストーリーをつくりその絵を描くことが目的です。紙芝居形式でも良いですし、描いたものを後からまとめて本にしてあげても良いですね。一気に描き上げるのではなく、時間をかけて思いついたときに描き足すというように継続して遊ぶという経験も必要ですね。
絵本形式でなく、ペープサートや指人形を作って、お話をつくり人形劇ごっこをするのも想像の世界が広がり、表現力も身につくことができます。
参考
リリアン方式の編み物(マフラー作り)
ペットボトルに割り箸を数本つけて毛糸で編んでいきます。牛乳パックや空き箱でもできますが、つくっている途中で土台の形が崩れやすくなることが多いので、固いペットボトルがおすすめです。根気が要りますし、時間をかけて毎日少しずつコツコツしなければいけません。5歳児になると、楽しい! きれい! という活動だけではなく、コツコツする活動、ちょっと頑張らなければならない活動なども経験させることによって集中力も養われますし、何より「やった!」「できた!」という達成感が感じられるのではないでしょうか。
参考動画
友だちとの話し合い
友だち同士話し合い、アイデアを出し合って大きな一つの物をつくっていくという共同製作は心をも成長させる大切な活動です。みんなで協力し合うという経験も必要な活動ですね。保育者があまり口出しをしすぎず、子どもたちにある程度任せることで、子どもたちは責任感を感じることができます。
作品展は、子どもたちがこれまでに日常的に経験してきた遊びの活動を見てもらうものです。保護者が自分の子どもの作品を見て、その子が楽しんで遊んだ様子が目に浮かぶようなものを展示できたら良いですね。そして、その作品が生かせるような展示方法も工夫しましょう。