保育園の敷地内に自宅がある環境で生まれ育った私の関心は工学研究。大学では人工知能を専攻し、卒業後はNTT情報通信研究所に就職しました。研究に明け暮れる中で帰省した際に、保育園長の父が園の将来について語りました。「お前が保育の仕事をすることもないだろうから、いずれは園を閉じようと思っている」。私以上に優秀で、私の代わりがいくらでもいる大企業か、私以外に誰も務まらない実家の園か。鶏口牛後。私は後者の選択を決断しました。
一般企業から保育業界に転職して驚くことは多々ありました。また、保育を取り巻く不十分な制度、保育に対する世間の関心の低さも大きな課題であると感じ、拙著『ここが変だよ、保育園』を上梓しました。機会があれば是非ご覧ください。
園のリソースをできる限り保育に割り当てるため、組織構築や行政との連絡の円滑化など「大人の工夫」で、書類業務のような、「大人の都合」による「大人の業務」の削減に務め続けています。2019年には1法人複数施設へ展開し、組織内の誤解や錯覚を生まない組織管理手法である「識学」を導入しました。保育業界では初と聞いています。
「待機児童」という保育バブル期は既に終了しました。今後は保育も、行政に守られる運営ではなく、自立した継続可能な経営が求められます。もちろん「保育の質」「選ばれる施設」という視点は重要ですが、それだけではなく、子どもたちをみなで見守り、施設がなくても誰も困らない地域社会の実現を目指していきたいと考えています。
社会福祉法人みなみ福祉会(愛知県) 理事長 近藤 敏矢 先生
社会福祉法人みなみ福祉会 理事長。法人のDX取組などは、経営協の実践事例として複数回掲載されている。ネット上にもインタビュー動画あり。日本保育学会所属。