創立43年。初代園長の母は東京の大学を卒業し島へ戻った頃、同じ人間だから考えることや思うことにそう変わりはないのに、モジモジして自分を現さないようにしている人たちの姿をじれったく見ていたそうです。保育所長になり、まず幼児から始めなければいけないと強く思ったのが、「自分の思いや考え、願いを口に出して言えること」「自分を自由に表現できること」でした。自由でオープン。これが園の原点です。
園という場所は、子どもの特性を見つけるところです。子どもの好きなことを伸ばす。広く浅くいろいろなことを経験させて、心豊かに裕福に育てる。その体験が何年先、その子を支える成長点になるかもしれない。そのためにも、子どもが思うままに発言できる「自由さ」がなければいけない。二代目園長になり40年ほどが経ちましたが、この教育方針は変わりません。
ICT化が進み、子どもたちの様子も瞬時に保護者と連絡し合える時代になりました。しかし、機器を媒体とする社会は役立つ側面もあるものの、言葉という保育に必要、欠くべからずの生の会話が減少していく現実が見えてきています。
今、世の中は人間が失ってはいけない言語や感情の育みに、むしろ重きを置かなければいけない時代になっていると思います。園長として幼児教育を見直すべきときではないかと痛切に感じています。当園で考えているのは日本語を中心としたカリキュラムの構築です。日本語ほど表現豊かな言語は他に類を見ません。表現の豊かさを学ぶということは、心の豊かさを造形していくこと。心をふるわす体験がいつか子どもたちの人生に広がりをもたらしてくれると信じています。
カンガルー保育園 園長 下地 諒子 サイプス先生
「知・徳・体・社会性の芽を育む保育」を理念に、絵本や絵画、音楽、運動など様々な体験ができる園づくりを推進。園には図書館があり、園長自らが仕入れる蔵書は800冊を超える。