青色のライトに照らされ光る教室。壁には色とりどりの蛍光塗料で塗られた児童生徒たちの作品、床には海の中をイメージした生き物の絵、透け感のあるカーテンにはプロジェクターで海の映像が映し出され、天井を見上げると細い網でつくられた作品がキラキラと浮かびます。これは、大阪府立箕面支援学校にあるスヌーズレン教室の様子です。
スヌーズレンは1970年代のオランダで知的障がいを持つ方々の施設から生まれた活動。オランダ語の「クンクン匂いを嗅ぐ(スヌッフレン)」「うとうとする(ドゥーズレン)」を組み合わせた造語で、光や音、香り、振動などで感覚をやさしく刺激しながら、リラックスする空間のことをいいます。
「大人も子どもも違いなく、自分の好きなものに囲まれながらゆっくりと時間を過ごせるお部屋です」
そう話すのは、同校首席の宮脇敦子先生とスヌーズレン教室を担当している田口幸司先生です。
しかし、コロナのパンデミック以降、スヌーズレン教室を開くことが困難に。カーテンを閉めて部屋を薄暗くしたり、児童生徒が自由に物に触れることを楽しんだりする特性から、換気や触れたものを全て把握することは難しく、教室内の作品や備品を消毒するにもかなりの労力が必要でした。
そうした中、同校が導入したのが、人体や動物に無害の可視光を使用してウイルスを除菌・不活性化させるLED除菌照明「VioClean」です。
特徴は、通常の照明として使用しながら除菌ができること。白色LEDと除菌効果のある405㎚の光を照射する白色除菌モードと除菌効果のある光のみを照射する省エネ除菌モードがあり、スイッチひとつで切り替えられます。405㎚という波長は、JIS規格や環境省が人体や動物に無害と認める波長です(人体に有害とされる紫外線はJIS規格は300㎚以下、環境省は400㎚以下と規定)。
そのしくみは酸化によってウイルスを不活性化させるというもの。光がウイルスや細菌などの微細な生物に当たると、皮膚を通して細胞に入り細胞内に活性酸素が発生します。これらが細菌の皮膚に含まれる水素と結合することで皮膚が破壊され、ウイルスが不活性化。最終的には水と酸素のみが残ります。コロナウイルスや各種菌に対する有効性も認められており、コロナウイルスは24時間で90%以上、インフルエンザウイルスは8時間で98%以上を除菌できます。
当初、新たな除菌方法を検討していた田口先生によると、「より安全で、且つ電気だけで除菌できるのは魅力だった」とのこと。現在は、「VioClean」を24時間点灯。室内が常に除菌された状態を保っています。
子どもに未来をつなぐ「光の力」
導入について宮脇先生と田口先生は、「普通の風邪が命に関わる児童生徒もいる。少しでも安全な環境をつくりたいと思う中で、こうしたサポートをしてくれるアイテムがあることは気持ち的にもずいぶん楽になる」といいます。
加えて功を奏したのは、省エネ除菌モードの青色の光とスヌーズレン教室の相性がよかったこと。もともと使用していたブラックライトと同様に蛍光塗料を光らせる効果があり、より広範囲の人や物を認識できる照度が児童生徒の安心感につながっているそう。水族館の中にいるかのような空間に児童生徒も喜び、先生たちもできることの幅が広がったと手ごたえを感じているようです。
さらに近年は、「スーパー耐性菌」と呼ばれる抗生物質が効かない耐性菌が現れ始め、「このまま増え続けた場合、コロナを超えるパンデミックになる」とWHOも警鐘を鳴らしています。
「VioClean」を提供する㈱マクニカの脇坂さんは、「耐性菌は除菌や治療の際に抗生物質をウイルスに与えることでつくられる。抗生物質を使わない光による除菌であればウイルスを悪質化させることなく、人と共生できる。耐性菌をつくらない世の中にしていきたい」と教えてくれました。自然の営みである光作用を活かした今回の除菌方法は、子どもに未来をつなぐ選択肢とも言えそうです。
大阪府立箕面支援学校(大阪府)
「子どもが落ち着いて過ごせるような場をつくろう」と、2018年にスヌーズレン教室を導入。スヌーズレンの活動を広めようと情報発信も積極的に行っている。
電話:045-470-9118
メール:smart-infra@macnica.co.jp
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