プロ選手交流、移動動物園 地域保育で宝の経験

地元プロソフトボールチーム
「Hondaリベルタ」の選手と交流
 コロナ禍で園生活や行事が制限される中、子どもたちの「経験」の機会が減り、保育者からは不安の声も挙がっています。そうした中、ふじおか幼稚園は、地域と協力して園内でできる体験学習を企画。地元プロ選手との交流や動物とのふれあいから、子どもの安心や社会性を育んでいます。

 2022年1月、栃木県にあるふじおか幼稚園の園庭には、地元プロソフトボールチーム「Hondaリベルタ」の選手たちと元気に交流する子どもたちの姿がありました。

 この日、年長児を対象に開催されたのは「あそボール」体験会。「あそボール」とは、スポンジ製のボールやバットを使ったベースボール型のボールあそびのことです。
 野球やソフトボールと大きく異なるのは、ピッチャーがいないこと。打者はカラーコーン上に置いたボールを打ち、決められた場所(ベース)に向かって走ります。守備側がボールを運ぶよりも前にベースまでたどり着けたら点が入るというシンプルなルール。小さな子どもでも、「打つ」「投げる」という動作を楽しく学べるあそびで、園や地域でも普及が進められています。

 プロ選手を目の前にした子どもたちは、大興奮。一緒に準備体操をした後は、身体を大きく使ったからだじゃんけんをしたり、あそボールでキャッチボールしたりしながら交流を深めました。
 そうして身体も温まり、「あそボール」にいざ挑戦!子どもたちは攻撃・守備にわかれ、ベースでボールをキャッチする役はHondaリベルタの選手がサポート。子どもたちの一投一打に歓声と笑い声があがります。

 発案者である市村弘貴園長は、「身近なところにたくさんの”本物”が存在する。世の中から認められているものや人にふれる体験は、子どもにたちにとってかけがえのない経験になる。コロナ禍で少なくなってしまった経験の機会をつくっていきたい」と企画に込めた思いを語ります。

 さらに同園は、地元・宇都宮動物園の協力のもと、園に移動動物園を招くイベントを実施しました。うさぎやひつじ、やぎ、モルモット、ミニブタなどの動物が来園し、子どもたちはエサをあげるなどして交流。子どもたちへのプレゼントとして、市村園長自らが企画しました。

 「僕らがどれほど工夫を凝らしたとしても、コロナ前と今とを比べたら、前者の方が子どもたちにとってよいものに違いはない。その差をどう埋め、子どもたちの経験を守るか。地域社会との協力でこの経験の場をつくることができた」

 目を輝かせ、大喜びする子どもたちの姿に手ごたえを感じたようです。

社会と子どもをつなぐ意味

移動動物園では園庭にケージを設営。
動物とふれあう園児の様子

 同園はこれまでも、生き物とのふれあいから命の大切さを学ぼうとミニチュアホースを飼うためのクラウドファンディングをしたり、絵本『えんとつ町のプペル』の世界観を楽しめる光る絵本展・プペルバスを園に招いたりと、さまざまな形で社会と子どもたちをつなげてきました。

 その狙いについて市村園長は、「子どもたちの成長を喜んでいる大人が世の中にたくさんいると伝えることが、子どもたちの成長につながる。世の中に素敵な大人がいて、子どもの成長を見守っていること、喜んでいることを知ってもらえたら」と語ります。

 同園の教育目標は「立ち上がるチカラ」。社会と子どもをつなぎ、安心感や経験を育むことが立ち上がるチカラにつながる。その機会は、このコロナ禍も園・地域社会の協力によって着実に広げられています。

認定こども園ふじおか幼稚園(栃木県)

 1955年開園。「立ち上がるチカラ」を教育目標に掲げ、独自の教育法「ふじおかメソッド」で子どもが自ら考え行動できる環境づくりに取り組む。本記事で紹介したふじおか幼稚園は2020年10月に、オウンドメディア「ふじおかようちえんのたのしいほいく」をオープン。取り組みに込めた思いを発信中です。
 

ふじおかようちえんのたのしいほいく
執筆者
服部由実

編集長。企画・取材を担当。IT企業の広報部門に所属し、社外広報や採用活動に取り組んでいます。

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