築100年の園舎を建て替えたのは2010年です。伊藤園長の保育方針「人を思いやる気持ち、やさしい気持ち、我慢する気持ち」をコンセプトに、計画段階から保育士たちを交えたワークショップを実施。成果を設計に反映させました。保育活動をイメージして動線を追求したり、ランニングコストを考えたりしながら、作品保管用の棚、衛生面と持ち物管理に適したコップ入れ、子どもの成長に応じて調整できる椅子なども誕生させました。
また、「ギルフォード議論」(ギルフォード博士による知能構造を説明した理論)に基づく「知能因子刺激」を目的とした様々な仕掛けも盛り込みました。子どもたちにとっては園庭も園舎もすべてが遊び場。玄関の近くには思わず飛び込みたくなるボールプールと水槽を設けました。水槽は伊藤園長が円柱型にこだわりました。泳ぎ回る魚たちを追いかけて、ぐるぐる回りながら見ることも、お友だちみんなで観察することもできます。かえるをかたどった手洗い場、階段の側面の丸い絵窓、廊下の絵本棚も、そのひとつひとつが子どもたちの日常生活では遊びのヒントとなり、好奇心をくすぐっているのです。カラフルなイラストで飾られたトイレでは、トイレトレーニングも楽しくできます。機能的かつ遊び心いっぱいの園舎は、子どもたちを守る責任感と使命感の象徴なのです。
企業経営者にも学ぶ姿勢
保育士、主任を経て園長に就任。園長になって初めて「経営視点」の重要性に気付き、焦りを覚えたという伊藤園長。新入園児が激減した時には、「選ばれることの大切さ」を痛感したと言います。以来、日本経営教育研究所の山下氏に師事。県外にも積極的に出向き、多くの民間企業の経営者にも学ぶことが多いそうです。
ITの担当は副園長。ワードで作る園だよりは写真を多用したカラー印刷で「捨てられないおたより」を意識しています。また、ブログも写真を複数載せて、保育の日常をほぼ毎日更新しています。職場からアクセスする親、遠方の祖父母が楽しみにしてくれていることが原動力となっています。メール配信も園外保育や持ち物のお知らせに役立てています。
「言うだけじゃなく、自分も動くこと。口と体と頭を動かせる間は現場に立つ園長でありたい」。経営の視点を持ちながら現場に立ち、地道で丁寧な保育を実践する伊藤園長の瞳には、深い愛情ゆえの厳しさがあります。