2005年に創立50周年を迎えた横浜さがみ幼稚園は、満州への出兵やシベリアでの捕虜生活を経験された現理事長が、伊勢崎町の映画館で観た高峰秀子さん主演の映画「二十四の瞳」に感動したことがきっかけで開園されました。平和な現在の日本に暮らす私たちには想像もできないような辛い経験をした一方で、多くの人々の温かい人情に支えられ、幼稚園の開設が実現できたことを感謝する理事長。そんな人生経験から、人間に最も重要なものは「善意豊かな人情」であることを学んだといいます。
現在では、息子の大さんが園長となり、その妻である惠子さんが、サポート役を担っています。園内のあちらこちらに見受けられる掲示物の、ほとんどが惠子さんの手づくり。保護者への細やかな心配りです。
一針一針、手縫い感覚「善意豊かな人情」伝え
行事の案内ポスター、施設利用の注意、保育活動のニュースなど、惠子さんがつくる掲示物は、かわいいものばかり。園向けのイラストや文書のひな型を備えたソフトを使えば、こうした掲示物は簡単にできてしまうと惠子さんは言います。
園内に掲示する「速報」は文字どおり、その日のできごとを保護者にいち早く伝えるための掲示物。保育中の子どもの様子を即日に知ることができるので、保護者も楽しみにしているようです。預かり保育でソレイユの丘(横須賀市にある公園)へ園外保育に出かけた日も、お迎えが来るまでに一日の思い出を印刷物にまとめました。仕事が忙しく、子どもたちと楽しく過ごすことが叶わない保護者たちは、子どもに楽しい時間を与えてくれたこと、その思い出を自分たちとも共有できるようにしてくれたことに大変感謝してくれました。
このほか、出産されたお母さんには「おめでとうカード」を進呈しています。これは、日頃子育てに忙しいお母さんたちを癒し、安心させてあげたいという気持ちからです。
「ITの良さは、心をかたちにできること。かたちにすることで想いが伝わり、相手が喜んでくれるのが嬉しいんです。」惠子さんがかたちにしているのは、子どもたちや保護者への思いやりの心なのです。「一針一針、手縫いをしているような感覚でパソコンを使っているので、ITを活用している意識がないんです。でも、手縫いよりはるかにスピーディですよね。」こうした惠子さんの取り組みによって、理事長が語る「善意豊かな人情」が、より多くの人々に、より早く、そして確実に伝わっているのです。
横浜さがみ幼稚園の特徴
新園舎2階部分の空中デッキ(通称ロトンダ)。お祭りの日には蒸気機関車を走らせたり、晴れた日にはデッキ下の散水栓から水を噴射して虹をつくったりします。ピアノによる音感教育も特徴のひとつで、プロの指導によるミュージカルにも取り組んでいます。
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苅込惠子(かりこみ・けいこ)先生