一枚の折り紙で、どう遊ぶ? 保育者もワクワク発想を

巣立ちの日に新宿御苑にて。ここは、季節の移ろいとともに子どもたちの成長を数多く発見した想い出の詰まった場所です。
「一枚の紙があれば、いつでもどこでも遊べるの」「保育者の品格は、使命感を軸として、子どもたちにも保護者にも凛とした態度をすることかな。でも、答えは一生かけて見つけるわ」。御苑学園幼児ルーム主宰の仲田安津子先生の言葉です。

「せんせい、おりがみおって。」できあがりを楽しみに待つ子どもたちが先生を囲みます。無邪気な瞳を見つめて40余年、御苑学園幼児ルーム(東京都新宿区)主宰の仲田安津子先生は、折り紙を手にこう話します。「一枚の紙があれば、いつでもどこでも遊べるの。こうやって話しているうちにね、ほらできたよ。」

次は何ができるんだろう?そのリズミカルな指先からは目が離せませんが、やさしい語りかけは自然と耳に入ってくるから不思議です。新聞や割り箸袋など、身近な紙で常に新たな紙あそびのアイディアを見いだす仲田先生。

「保育での折り紙は技術を競うものじゃないの。だから、難しいものは先生が折るのを見て楽しめばいいし、折っている途中で何かがイメージできて『できた!』と思ったら、それも大発見なのよ。」話しながらも先生の手は止まりません。「新聞紙を5等分に折るでしょ。それをさらに折るとね…正五角形の完成!」折り紙は「幾何学」への入り口でもあるそうです。

「日本の文化」としても保育者から子どもたちに教え伝えて欲しい折り紙。「わぁ、魔法みたい!」一枚の紙を何に変身させるのかは、子どもとのやりとりから発想するものだと仲田先生は言います。

一針一針、手縫い感覚「善意豊かな人情」伝え

御苑学園幼児ルームでは、卒園児に「巣立ちの季節」と題したDVDアルバムをプレゼントしています。御苑の四季を感じながら成長していく子どもたちの健やかな表情が愛らしいアルバムです。その制作の中心を担っているのは学園のOGでもある20代の若い女性スタッフ。彼女は、スタッフとして働くうえでパソコンが使えることを強みにしたいと勉強を重ね、仲田先生もそれを見守ってくれました。

写真を整理し、ストーリーを組み立て、BGMにあわせて編集したその作品には、スタッフとしての「こだわり」と、子どもたちへの愛情があふれています。

また、スタッフが撮影する写真は、技術的にうまいプロのそれとは異なるやわらかさが魅力です。何気ない日常で子どもたちがきらりと光った一瞬。そのシャッターチャンスを見逃さないのです。

「品格本」の流行を受け、仲田先生は今、「保育者の品格」について想いをめぐらせています。「使命感を軸として、子どもたちにも保護者にも凛とした態度をすることかな。でも、確かな答えは一生かけて見つけるわね。」その言葉にはパワーがみなぎっていました。

一枚の折り紙で、どう遊ぶ? 保育者もワクワク発想を(枠内)
仲田 安津子(なかた・あつこ)氏
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1931年東京生まれ。幼稚園教諭、園長、専門学校講師などを経験。
現在では御苑学園幼児ルームを主宰するかたわら、折り紙や読み聞かせに
関する本の出版や、保育者の育成を目的に全国各地での講演活動を行っている。

執筆者
鈴木あゆみ

パステルIT新聞編集長。特集の企画・ライティングほか、紙面全体の編集を担当しています。

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