保護者ニーズ先取りの幼保一体化施設 人気の理由は伝える力

Webサイト、ビデオ、ニュースレターの編集は鳥居氏の重要な仕事だという。食育本も発行し、園の取り組みや考え方を広く伝えている
夏見台幼稚園・夏見台保育園は、働くお母さんのための園をめざし、2007年に開園した幼保一体化施設。しかし、説明会に600名を集めたものの初年度の入園者は12名。そこからいかにして人気園になったかを園主の鳥居徹也氏に伺いました。

 「働くお母さんのための幼稚園をつくりたい」。鳥居勝一理事長(鳥居氏の父)のそんな想いから保育園を併設した幼稚園が生まれました。14時迄のAコース、18時迄のBコースが選べ、大型駐車場やクリニックも完備。駅までのバスに乗車しやすくする等、通勤と送迎にも配慮されています。広大な敷地と豊かな自然環境を活かし、子どもたちが思いっきり体を動かして遊べる空間も充実させました。教育方針は「楽しい! うれしい! やってみたい!」。あそび中心で、子どもの意欲の向上と心身発達のための独自教育プログラムによって保育が行われます。

 幼稚園と保育園の良さを併せ持った新しい施設。だからこそ、独自の理念や取り組みを伝える工夫が必要でした。鳥居氏は製薬会社や学園系列の専門学校の勤務経験があり、経営や人材教育、情報発信技術は学んでいましたが、当時は幼児教育を語るには勉強不足。入園説明会ではサービス訴求に終始しました。しかし、その結果、600名の参加者を集めながらも入園者は12名。サービスを期待する保護者からはクレームの嵐でスタッフは疲弊するばかりでした。

 この経験から鳥居氏は、サービスよりも教育の効果やスペシャリストをめざして学ぶ先生方について語ることに心血を注ぐことにしました。すると、翌年から状況は一変。伝える技術を高めたことで保護者の理解が深まり、人気園への道を歩むことになったのです。
 

心を動かし納得させる

 園主である鳥居氏はWebサイト更新、動画編集、ニュースレターの発行を自身の重要な仕事と認識。ニュースレターは在園児家庭と資料請求者に月2回配布。動画は保育風景を撮影してDVDやWebサイトで公開しています。「行動経済学によると、人は感情(心)で決めて理屈(頭)で納得するという。これを幼稚園選びをする保護者に当てはめ、まずは動画で心を動かし、レターで論理的な理由付けをする」と鳥居氏は語ります。また、写真で子どもたちの成長ぶりを伝える「写真ニュース」も毎月配布。写真はインターネットでダウンロードもでき、保護者に喜ばれています。
 
 「0~2歳児の発達を踏まえた教育、あそびを中心にした異年齢保育で子どもたちがどんな経験をしているのか。それを伝えるためには教育の付加価値を言葉を紡いでレターにしたり、ビデオや写真ニュースで見える化して保護者の理解を深めたりする努力が不可欠。動画編集は場数。将来的には園だよりも動画化して保護者とのコミュニケーションに活かしたい。そして、先生になるという幼い頃からの夢を叶えたスタッフが自己肯定感を高め、子どもたちや保護者とうまく関われる環境にしたい」と鳥居氏。キャリア教育の専門家という顔も持つ鳥居氏はスタッフへの想いも特別です。夏見台幼稚園が「先取り」したこと。それは、大切な子どもを預ける時、知っておきたい事、親として学ぶべき事をわかるように伝えて欲しいという保護者ニーズかもしれません。

執筆者
鈴木あゆみ

パステルIT新聞編集長。特集の企画・ライティングほか、紙面全体の編集を担当しています。

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