55年の歴史を持つ、おおつな保育園。園長の菱川広昭氏は、横浜市私立保育園園長会の副会長と次世代育成支援行動計画推進協議会の委員、全国私立保育園連盟では保育国際交流委員会の委員などを兼任し、揺れる行政と地域社会、そして保育の現場を見守りながら、保育園のあるべき姿を追い続けています。
50名のスタッフのうち正職員は40名。その半分以上が10年以上のベテラン。保育園経営の非常識ではあるものの、「現場を任せられる安心感がありがたい」と言います。
そんな多忙な菱川園長ですが、ホームページの管理と更新は、みずからの手で行っています。iPhoneやiPadなど、保護者に普及していく新たな道具にも対応したホームページにしました。 トップページには、ツイッターのつぶやきが表示されるように設定。ツイッターは個人でも利用していましたが、それとは別に園の「公式アカウント」を取得。広報担当役として主任に協力してもらい、本人の顔写真も公開しました。
つぶやきを遡ってみると、震災時の緊迫感が蘇ります。電話が通じない、メール配信も遅延している状況において、保護者をはじめ安否を気遣う多くの人々が、この公式アカウントから発せられる情報に注目しました。「日頃から保健や給食、イベントのお知らせなどをつぶやいていたことで、その存在が広まっていたことがよかった。ここで主任の顔が見られただけでも安心感を与えられたのでは?」と菱川園長は語ります。
つぶやきから強みづくり
おおつな保育園は、「発達の気がかりケア」と「アレルギーケア」が強みです。アナフィラキシーショックを持つ子どもの受け入れ経験がなかった当時、アレルギー児を抱えた母親の「私たちはどこへ行けばいいの?」という一言に心動かされ、「経験がないならパイオニアになろう」と栄養士、保育士、看護師が立ち上がりました。「おいしい、楽しい給食を、すべての子どもたちに」。当たり前のことを実践するために、現在では200名を超える園児の約一割が個別メニュー対応。見学希望や講演依頼も受けるようになりました。
「町の中に小さな図書館が欲しい」。そんな声を受けて地域の子育て支援を目的に「絵本カフェ」もオープンしました。心地よいBGMの流れる中で、子どもと安心して絵本が楽しめる「ゆるい空間」を目指しています。コーヒーとお菓子、子どもの飲み物付きで利用料は1回500円。このほか、園庭でのジャズイベントも恒例となりました。
きっかけは誰かのつぶやきから。やがて、その取り組みが園の強みになりました。つぶやきが大きなチカラになる。そんな時代を迎えています。