保護者との信頼関係を深めるために 「うちの子は?」の声に応えて

運動会の全体遊戯風景。えいすう幼稚園の園庭に、カラフルな円がきれいに描かれた
ホームページや園だより、連絡帳に込める保育者の想いは、保護者に届いているのでしょうか。今回は、出版社勤務を経て3代目園長となった学校法人陽光学園えいすう幼稚園(神奈川県厚木市)の藤野心園長を取材し、情報発信について考えました。

 「特別なことはしていない」。そう切り出す藤野園長でしたが、えいすう幼稚園における情報発信の取り組みには、ポリシーが存在します。それは保護者の「うちの子は?」に応えること。「保護者の関心事は、集団の中のうちの子はどうなのかということ」。藤野園長はそう認識しています。

 定期的に発行しているおたよりは、全家庭共通の「えいすうNEWS」とクラス別の「○○組だより」。いずれもB4用紙の縦向き、三段組みです。飾りのイラストはほとんどなく文字がぎっしりで、写真はふんだんに盛り込まれていますが印刷はモノクロ。ただ、細かい描写を含んだストーリー性のある文章により、写真の存在感はあり、園やクラスの集団情報は、充分伝わっているようです。

 個人的な情報のやりとりは電話が中心です。「最近こんなところで成長が感じられます」「ちょっと元気がないみたいですが・・・」など、一対一ならば気になる点を具体的にやりとりできるので、数分でも貴重です。「電話は双方向、こちらから連絡することで、反対に保護者にとってもちょっとした心配事を気軽に相談する機会にもなる。何気ないことであっても、保護者の側から園に相談を寄せるのは、なかなか勇気のいることなのです」。連絡帳に向かう時間をできるだけ直接対話に充て、保護者との生きた会話を通じて信頼関係が深まるというのです。

園の運営よりスムーズに

保護者との信頼関係を深めるために 「うちの子は?」の声に応えて(サブ)
↑保護者に配布されている園だより「えいすうNEWS」。B4用紙に3列の段組みによるレイアウト。多数の写真を掲載していながらモノクロ印刷なのだが、文章と相まって雰囲気を伝えるのには充分な印象

 また、「えいすうNEWS」は、ホームページのコンテンツとしても二次活用されています。ホームページのためだけに写真や原稿を用意するのではなく、定期発行する園内新聞と重複使用することで、ふたつの情報発信業務が無理なく習慣化され、「頑張りすぎない、欲張らない情報発信」ができたそうです。さらに、そのことでホームページではポイントの絞られた情報発信が可能となり、園外の閲覧者へも幼稚園の特徴がよく伝わり、未就園児の保護者から分かりやすいとの評価を頂いているようです。

 カリキュラムや行事が満載のえいすう幼稚園。そのひとつずつを保護者の理解と協力によって実りあるものにしています。「情報発信の目的はミスマッチを減らして園の運営をスムーズにするため」。習慣化された情報発信が目的を果たしているかどうか。自園に適した無理無駄のない手段選びが求められます。

執筆者
鈴木あゆみ

パステルIT新聞編集長。特集の企画・ライティングほか、紙面全体の編集を担当しています。

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