幼稚園の先生の一言に救われファンに 保護者の心をつかむ

三つ子が誕生し、幼稚園の先生と出会ったことで現職の道に。子どもたちは現在5年生
前号に引き続き、11月に東京国際フォーラムで開催された「選ばれる園づくりの仕組み公開セミナー」のダイジェストです。今回は船井総合研究所の経営コンサルタント、石田敦志氏による「これから必要とされる幼稚園経営のスタンス」です。

 石田敦志氏は、食品メーカーの営業を経て船井総合研究所に入社。幼稚園専門の経営コンサルタントになりました。そのきっかけは、ある幼稚園の先生との出会いにあります。

 念願の子どもを授かり、幸せを噛みしめていた石田夫妻。三つ子の親となりました。しかし、2歳までの子育ては壮絶で、心身ともに疲れ切った状態に陥りました。それを救ってくれたのが体験入園時の先生の一言。「今まで大変でしたね」。思わず涙が出そうになりました。そして、入園式に「これからは一緒にがんばりましょう」と励まされて以来、子育ての喜びを感じながら成長を見守ってきました。ある時、石田氏は出会った時から園や先生のファンになっていたことに気づきます。そして、「園を通じて子どもをハッピーにしたい」という想いが高まり、自身も教育の世界に携わる道を選びました。

 今、幼稚園の課題として園児募集が挙げられることが多いようです。しかし、「世帯所得が減少したからといって価格競争や過剰サービスで経営を悪化させてしまっては、園を経営する目的もわからなくなってしまう」と石田氏は警鐘を鳴らします。こういう時代だからこそ、「自分の幼稚園の良いところ、使命は何か?」をあらためて考え、教職員と共有していくことが必要だというのです。「子どもたちのしあわせな未来とは?そのために今必要なことは?具体的な教育の中身は?子どもたちの成長ぶりは?保護者の評価は?」という5つの問いかけの答えを見出すことで、やるべきことが明確になっていくのだと石田氏は語ります。「競争」という世界からの脱却。これが本質的な課題解決につながるというのです。
 

園児が自然に集まる園に

 石田氏は「インターネットはすでにつながっている人たちとの関係性をスピーディに深めるためのツール」と定義づけます。そのため、園のウェブサイトやブログを開設する目的は、在園児家庭とのコミュニケーションを深めるためとし、活発な情報発信を勧めています。また、「園として満足のいく成果を上げるには、園長が細かい使い方を覚える必要はないが、うちの園はネットでもアナログでも情報発信にしっかり取り組むという方針を強く打ち出すべき」と石田氏は語ります。
 
 「自分たちが迎えたいと思うような保護者層が自然と集まってくるような独自の園づくりをしたい」。これは多くの先生が理想とすることでしょう。それを実現するための重要な取り組みが「情報発信」と「コミュニケーション」ということなのです。園の考え方、活動とその目的、教育の結果、保護者が得られるもの、子どもたちの成長ぶりまでをきちんと伝え、理解を深めるために。逆に言うと、その活動さえ継続していれば、理想的な保護者が自然と集まる園ができるのかもしれません。

執筆者
鈴木あゆみ

パステルIT新聞編集長。特集の企画・ライティングほか、紙面全体の編集を担当しています。

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