「デジカメによる写真革命のキーワードは『撮影の一般化』と『圧倒的なショット数』だ」。平井氏はこう分析します。
カメラ人口は急増し、特に若い女性の愛好家が増えました。操作も簡単になり、カメラ体験の低年齢化も加速。写真を撮る・撮られる・配信する文化が急速に拡大して一般化していきました。
フィルムの残数やミスショットを気にせず撮影できるようになり、ショット数も激増。1泊2日の旅行で300枚もの写真を撮るのが普通となりました。そのうち、いい写真は3割程度だそうです。
ただ、平井氏は自社のプロカメラマンに「切った瞬間に仕留めたような感覚の残るシャッターを大切に。時にはシャッターを切らない勇気も大事」と指導しています。
運動会などの行事は、両親が我が子の感動的なシーンを、見て感じて心に刻める感激の連続です。同じ場にいながらカメラマンは、適切なアングルと正確なピントで最高の瞬間をカメラに収めるべく、感覚を鋭く研ぎ澄ませて立ち会います。「スタートラインに立った緊張の表情、近づく出番にドキドキの表情、運動場の片隅でこっそり友だちを励ます姿。良い写真の瞬間とは、本人が醸し出した純粋な瞬間。その一瞬を切り取るために集中して被写体を観察、動きを予想すること。格好よく言うとスナイパーだね」。
お客様の大切な思い出を残すプロの仕事に誇りを持って臨んでいる平井氏。写真が身近になったからこそ、1枚の写真の価値が高まったのです。
写真の掲示や配布も工夫
↑プロカメラマン 平井慎二郎氏
先生たちなら写真の掲示や配布にも凝りたいでしょう。例えば、写真を正方形に切り取る「ましかくプリント」や、写真の長辺に等間隔に穴を開けた「パフォレプリント」などのコラージュプリントをすると、写真の味わいが増すのだそうです。やはり、プロのノウハウは興味深いものです。
しかし、先生の作品で平井氏が「僕には撮れない」と唸る写真もあるのだとか。日々、子どもたちに寄り添う先生だからこそ、撮ることに意識を集中するだけで、素敵な写真が撮れるのです。