業務の改善や人材の確保 行政が保育職場づくり支援

 保育職場の業務改善や人材確保を地域全体で取り組む機運を高め、多様な解決の糸口を見出し、成果につなげることを目的に、行政も様々な事業を試みています。静岡県内の事例を紹介します。


この記事のポイント

  • 保育職場の業務改善や人材確保に取り組む静岡県内の事例を紹介
  • 事例1)課題解決の糸口を探る「個別巡回支援」
  • 事例2)保育職場の魅力伝える「フォトコンテスト」と不適切保育を防ぐ「日めくりカレンダー」


主体的な行動を促す専門家の個別巡回

 静岡県は令和6年度「働きやすい保育の環境向上事業」を展開しました。目玉は「個別巡回支援」。業務改善やICT活用のサポートを希望する園に民間企業の支援者が訪問し、個別相談や実践に伴走します。今年度は20園が対象でした。

 この巡回支援は現状を整理するための園長ヒアリングからスタート。課題の優先順位と実践できることを定め、それに着手することで小さな一歩を主体的に踏み出してもらいます。職員を巻き込み、第三者視点も交えた対話の効果は高く、例えば、負荷が高いと感じていた業務のシステム移行や45分のノンコンタクトタイムが実現できたり、モバイルディスプレイや生成AIなど、新しいハードやソフトに触れることで発想が柔軟になったりしたとの声が挙がっています。

 このほか、セミナー開催や事例集の制作など、県下の園に実践と成果を共有する取り組みもあり、硬直化しがちな大きな課題に対して現実的かつ主体的な行動を促すきっかけが生まれています。

巡回支援の一環で職員向けに生成AI活用講座を実施

保育職場の魅力発信フォトコンテスト

 藤枝市は、平成29年度から「保育士・幼稚園教諭等の働きやすい職場づくり事業」を実施しています。   

 今年度の事業では、保育者の働く姿を写真で地域に広く伝えることにより、保育職場への理解促進や担い手の確保につなげたいと考え、「ふじえだ保育のおしごとフォトコンテスト」を開催。市内の30園がエントリーし、オンラインと地域イベントであわせて1759人が投票。各賞が決まりました。保育関係者が選ぶ「保育者共感賞」を設けたことで、保育者が保育を客観的に見つめ、身近な仲間にエールを贈り合う機会にもなりました。

「ふじえだ保育のおしごとフォトコンテスト」の様子

保育者の共感が満載 日めくりカレンダー

 また、藤枝市では不適切な保育の防止策として、「耳をすませる日めくりカレンダー」を制作しました。子ども、保護者、保育者と関わるとき、心の中も含めた「声」に耳をすませてみようという啓発が目的です。市内各園が実施したワークショップの記録をAIで分析。それを基に保育者の代表メンバーによる検討会で、不適切な保育が起こりやすい場面別に「耳をすませる」心構えをまとめました。まとめの過程には多くの共感があり、イラストは地元のイラストレーターや中学生も協力。日めくりに皆の温かな想いが込められました。

協働で完成した「耳をすませる日めくりカレンダー」
執筆者
鈴木あゆみ

パステルIT新聞編集長。特集の企画・ライティングほか、紙面全体の編集を担当しています。

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