オール地域でSDGs推進 オンラインで世界めぐり地球知る

オーストラリアの園と交流(幸町保育園)。「タイムラグがなく隣で話しているような感覚で、感激した」と櫛桁園長。プロジェクターやスクリーンはレンタル可。
 地球温暖化、それに伴う未曽有の自然災害や海面上昇、熱波による森林破壊。保育現場におけるSDGsに関心が寄せられる中、海外との交流を通して子どもの世界観を広げる園を取材しました。

 2021年秋、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が開かれ、世界平均気温の上昇を産業革命前から1.5度に抑える努力を追求することが協定に明記されました。「気候変動」から「気候危機」へと状況が移り変わる中、サステナブルな社会を目指すSDGsの推進が保育現場でも進められています。

 岩手県久慈市の幸町保育園と高知県土佐町のみつば保育園もSDGs実践園のひとつです。両園は、㈱シンクアロットが提供する園向けSDGsプログラム「EN-TRY(エントリー)」を今夏に導入。動画を通して世界の人や文化に触れる動画プログラム「ちきゅうフレンズ」や、海外園と自園をリアルタイムでつなぎ、互いの国を紹介しあうオンライン交流などを月に1回の頻度で行っています。

 当初、懸念点だったのは、オンライン交流時の時差や保育者自身の英語力に対する不安感。海外園との調整は同社にお任せできる反面、午前の保育時間が相手の午睡時間と重なるなど、時間の制約がある中で毎月海外とつなぐには、園の負担もありました。

 一方で、フィリピンやブラジル、タイなど、さまざまな国を動画で巡る「ちきゅうフレンズ」は、園の負担が少なく実施できる動画視聴型のプログラム。約20分の動画では、現地の大人や通訳のパペットがまるで目の前にいるかのように子どもたちにテンポよく話しかけます。両園は、この動画プログラムとオンライン交流を組み合わせることで園の負担を軽減。全8回の動画プログラムを行う傍ら、オンライン交流を1~2回行うよう年間計画に組み込んでいるそうです。

 さらに、その国の文化を学べるクイズや音声付きで正しい発音を確認できる事前学習教材、その国にまつわるSDGsの課題をまとめた振り返りシートを活用することで、体験が記憶に残りやすく、SDGsへの意識も自然と身につけられるしくみが魅力です。

「動画に登場する人と遊びを通して友だちになる。その友だちが、『木がどんどん伐採されて困っているんだ。だから、木を植えているんだ』と子どもたちに話しかける。お絵描きをしているときや給食のとき、何気ないときに『紙も木で作ってるんだよね』『汚いお水を飲んでいる子もいるんだよね』と、子どもたちの方から話題をあげるようになった」

 幸町保育園でSDGsプログラムを担当する主任保育士・田中美知代先生はそんな子どもたちの変化に驚いたそう。「これまで私たちの方から教えたいと思っても、ここまで子どもたちの心に届くことはなかった。自分たちなりに感じて考えていて、心の深いところまで伝わっていることがわかって嬉しい」と続けます。今では、「〇日は、『世界を回ろう』です」と行事予定を伝えると歓声が上がるほど。櫛桁浩司園長は、「子どもたちには地図という感覚がまだない。こういう地球があって、こういう国で、こういう人たちがこんな生活をしている。国際感覚を身につけてほしい」と期待を語ります。

地域・教委・園・企業の4者で

 みつば保育園のある高知県土佐町では、地域・教育委員会・園・企業が一体となってSDGsを進める動きも活発です。土佐町は自然豊かな山間に位置する人口4千人弱の小さな町ですが、教育にかける思いが強く、生まれた場所や環境に関わらず質の高い教育や学びの機会を得られる環境をつくろうと、SDGsの推進に取り組みはじめました。そうした中で生まれたのが、4者による「みつばせかいプロジェクト」です。

 同プロジェクトは、㈱シンクアロットが提供するSDGsプログラムを活用し、世界の文化に触れる機会を子どもたちに提供するというもの。フィリピンと行った初めてのオンライン交流では、園で育てている野菜を子どもたちが英語で紹介。和田千恵子園長は、「自分たちのことを子どもたち自身が伝えるという試みが良い。『この野菜も伝えたい』と懸命に伝えようとする子どもの姿に私たちも喜びを感じた」といいます。

交流した国を可視化するマップを園内で掲示

 動画やオンライン交流で訪れた国はマップで可視化。印刷した教材と一緒に、子どもたちが自由に見られるようにホールや5歳児の絵本コーナーに掲示しています。担任の竹政孝浩先生は、「園で購入した国旗カードと照らし合わせながら楽しんだり、『こんな国があったね』と話したりする姿が日常的に見られるようになった」と振り返ります。

 「海外とモニターを通じて関われるということが実際に自分の目の前で起こっている」。園だからこそできるSDGsの形があることを教えていただきました。

幸町保育園(岩手県久慈市)

2013年に英語教室を担当していた外国人講師が帰国。国際感覚を養う機会をつくろうと3歳以上のクラスでプログラムを始める。
http://www.saiwaicho.jp/

みつば保育園(高知県土佐町)

町唯一の保育園。マップに交流した国を示すシールを貼る際は、海外から届いた手紙風にするなど園児を喜ばせる工夫に真剣!
https://www.facebook.com/mitsuba.hoiku/

EN-TRY公式サイト
https://www.tal-entry.com/
本記事で紹介した「ちきゅうフレンズ」は20分の動画全8回で税込5万5千円。海外園とのオンライン交流も初回限定価格あり。詳しくはサイトをご覧ください。
世界OMEP「ESDアワード2021」受賞 オンラインで異文化交流
https://passtell.jp/20210621/26821//
2020年、学校法人久光学園志のぶ幼稚園は異文化交流ができるオンラインプログラムを民間企業と共同企画。翌年4月、同取り組みが「幼児のグローバル感性を育む」として、世界OMEP「ESDアワード2021」を受賞しました。
執筆者
服部由実

編集長。企画・取材を担当。IT企業の広報部門に所属し、ブランディングや採用活動に取り組んでいます。

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