卵は早く食べさせた方が良いのか:最新の発表から読み解く コラム

執筆者
川口 由美子

一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学にて離乳食の研究をし、メーカーにて離乳食の開発に携ったのち、管理栄養士として独立。
講演会や執筆活動にて「離乳食」「幼児食」を伝えている。
All About「離乳食」「幼児食」「妊娠中の食事」ガイド他、育児雑誌にて数多く執筆。著書複数。

国立成育医療研究センターの大矢医長ほか の発表が、世界5大医学誌の1つであるLancetに載りました。
2016年12月9日、このことがニュースになりましたが、どういう研究発表だったのでしょうか。

卵アレルギーは、子どもの食物アレルギーの中で最も多いので、気になる人も多かったと思います。

今回の研究について

対象

生後4カ月までにアトピー性皮膚炎を発症し、食物アレルギーになる可能性が高い乳児121人を対象にして行われました。
<試験方法>*ランダム化比較試験
121人のうち、60人は生後6カ月から固ゆで卵の粉末50ミリグラム(ゆで卵0.2グラムに相当)を、9カ月からは250ミリグラムに増やして1歳まで食べさせました。
残りの61人は、生後6カ月から卵の入っていないカボチャ粉末を食べさせました。

結果

その結果、1歳の時点で、卵の粉末を食べていない子どものうち23人(38%)が卵アレルギーを発症したが、食べた子どもで発症したのは5人(8%)にとどまり、発症率を8割減らすことができました。
>詳細>「離乳期早期の鶏卵摂取は鶏卵アレルギー発症を予防することを発見」国立成育医療研究センター

この実験から推測できること

アトピー性皮膚炎になっている子は、卵を避け続けるよりも、卵を6カ月から少量を食べ続けることで体が慣れ、1歳の時点でのアレルギー発症が軽減されたとのことです。

私たちが今考えること

「アレルギーが心配であれば、少し遅らせるとよい」という説がありましたが、今年3月、今回と同じ研究チームが、この「少しずつ始めることで発症が抑えられる」ということを発表したことは大きいと思います。
しかしながら、これを保護者の監視下で勝手に行うことは危険です。卵アレルギーがみられた場合は、必ず医師に相談することは必須です。
厚生労働省の「授乳・離乳の基本ガイド」をもとにして、7.8カ月頃から固ゆでのゆで卵の卵黄部分のみほんの少しから始めて様子をみることに変わりはありません。
近年、「アレルギーは特にないけれども、アレルギーがこわいから卵は1才まであげない」と思っていた人も増えてきていました。
そんな方は、必要以上におそれず、7.8カ月頃から茹で卵の卵黄部分を少しあげてみて様子を見る というガイド通りに試してみるといいかもしれません。 アレルギーがある場合や、心配な場合は医師に相談してから始めてください。

この記事は、アレルギーのない人は必要以上に卵を避けなくてもよい ということでとらえておくといいでしょう。

参考ニュース

離乳期早期の鶏卵摂取は鶏卵アレルギー発症を予防することを発見

協会サイト

一般社団法人 母子栄養協会
一般社団法人 母子栄養協会は、離乳食アドバイザーや幼児食アドバイザーの養成を行っています。

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