涙のあとに生きる希望与えた 子どもたちの歌声力

 「ぼくたちは ちいさくて なにも できないけれど、うたを うたいました。きいて ください」。

 代表の園児の挨拶に続き、子どもたちが歌う「空より高く」(作詞 新沢としひこ、作曲 中川ひろたか・スコットランド民謡)が岩手のIBCラジオから流れたのは、東日本大震災から9日目の3月19日でした。この放送が大きな反響を呼びました。子どもたちの歌声が、寒さと絶望の中に生きていた多くの人々の心に響き、勇気を与えたのです。

 歌っていたのは、社会福祉法人くりの木会ちゃいるどスクール(岩手県二戸市)の園児約60名。大きな被害を免れた同園の浪岡幸子園長が、「被災地を元気に」という想いから卒園式の練習を録音し、放送局に匿名でテープを送りました。しかし、そのきっかけをくれたのは「みんなのためにできることは何かな?」との問いかけに、「元気になる歌を歌うこと」と話した園児なのだそうです。

 その後、同局が制作した「空より高く~被災地に届け!園児の歌声~」は、日本放送文化大賞ラジオ番組グランプリを受賞。全国各地で再放送された他、個人ブログや動画投稿サイト「ユーチューブ」など、インターネットでも話題になりました。

 子どもたちの歌声のチカラ。そして、それを保護者以外の人々にも届けたいという先生の想い。このパワーがあらためて示されたできごとでした。

執筆者
鈴木あゆみ

パステルIT新聞編集長。特集の企画・ライティングほか、紙面全体の編集を担当しています。

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